2015年にケント・ナガノの指揮によってサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲をリリースし、高く評価されたモントリオール響のコンマス、アンドルー・ワンによる新譜。これもまた極めてハイ・レヴェルの名演だ。豊穣な美音に端正なフレージングを伴ったその演奏は、言葉の最良の意味で「オーソドックス」、正に曲の美しさを素直にありのまま堪能できる。殊に最初に収録された第6番のソナタが素晴らしく、地味なこの曲を入念に描き出し、傾聴させられる。終楽章の変奏における構築性など見事なものだ。サポートのシャルル・リシャール=アムランも文句なし。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2018年10月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集Vol.1 /ワン&リシャール=アムラン』
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第6番〜第8番
アンドルー・ワン(ヴァイオリン)
シャルル・リシャール=アムラン(ピアノ)
ANALEKTA/東京エムプラス
PAN28794 ¥2857+税