「パイプオルガン」と聞いても、多くの人にとって、同じような楽器に思えるかもしれない。しかし、実は製作された年代により、構造やピッチ、音律(調律の方法)は大きく異なる。東京芸術劇場のオルガンは、筐体を回転することで、ルネサンス・バロック・モダンの使い分けが可能。知的かつ熱い血の通った演奏で、国際的に注目を集める名手・椎名雄一郎は今回、これら3種の楽器を弾き分ける形で、大バッハの作品を録音した。時代を下るごと、素朴でシンプルな響きから、次第に色彩を帯び、やがて圧倒的な響きへ。音律の違いが音楽表現そのものに与える影響の大きさも、改めて実感できよう。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年8月号より)
【information】
CD『3つのオルガンで聴くバッハの世界〜東京芸術劇場〜/椎名雄一郎』
J.S.バッハ:「いと高きところでは神に栄光あれ」BWV711,715、「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」BWV622、パッサカリア BWV582、トッカータとフーガ ニ短調 BWV565、幻想曲とフーガ ト短調 BWV542 他
椎名雄一郎(オルガン)
収録:2016年4月、東京芸術劇場(ライヴ)
コジマ録音
ALCD-1175 ¥2500+税