演奏活動40周年! 第一人者が聴かせるドビュッシーの真髄
日本を代表するドビュッシー弾きのひとりである中井正子。今年演奏活動40周年を迎えたことから、15人の愛弟子たちによる「ラ・ミューズの会」が記念リサイタルを企画した。今年没後100年を迎えたドビュッシーの初期から晩年までの名作によるプログラムである。
「1995年から96年にかけて日本人として初めてドビュッシー全曲リサイタルを開催しました。2008年の没後90年に向けてはリサイタル、録音でもドビュッシー全作品に取り組みました。今年は私の演奏活動の節目に没後100年が重なりましたので、ドビュッシーの全体像をみなさんに楽しんでいただけるようなプログラムを考えました。初期の綺麗な響きの小品から、エネルギーに満ちた『仮面』『喜びの島』を経て、現代音楽とも言える作風にまで近づく晩年の『12のエチュード』へと、年代ごとに変わりゆく作曲家像を聴いていただきたいと思います」
高校在学中に渡仏し、パリ国立高等音楽院で学んだ中井。ドビュッシーを弾くには大事なことが二つあるという。
「ドビュッシー演奏には、ハーフ・タッチとハーフ・ペダルを駆使することが不可欠になります。彼の微妙な響きや音色の変化は繊細なタッチやペダルの扱いから生まれるからです。たとえば初期の『夢』や『アラベスク第1番』などには、ハーフ・タッチが比較的わかりやすい形で使われています。また『音と香りは夕暮れの大気に漂う』では、ドビュッシーならではのハーフ・ペダルの技法に注意して聴いていただくと、作曲家が意図した響きをよりいっそう実感できると思います」
1915年作曲の「12のエチュード」から、〈4度音程のために〉〈オクターヴのために〉など4曲がプログラミングされているが、中井はこの作品が大好きなのだと語る。
「今回は4曲だけなのですが、本当は12曲全部弾きたかったくらいです! ドビュッシーはピアノの腕が傑出していたわけではありませんでしたが、非常に耳の良い作曲家で、遠い倍音まで聴き取っていたらしいんです。彼の曲にしばしば見られる意表をつく転調は、彼の耳の良さからくるものだと思います。卓抜した聴覚を持った彼がもっと長生きしていたら、『12のエチュード』よりもさらに斬新でモダンな音楽を書いたかもしれませんね」
教え子たちをはじめ多くのファンからのたっての希望で実現した久しぶりのリサイタル。ドビュッシー没後100年記念の演奏会の中でも大きな注目を浴びることだろう。
取材・文:伊藤制子
(ぶらあぼ2018年6月号より)
演奏活動40周年 ドビュッシー没後100年記念 中井正子ピアノリサイタル
2018.6/17(日)14:00 東京文化会館(小)
問:ラ・ミューズの会 :lamusenokai@gmail.com
http://facebook.com/lamusenokai/
※本公演のチケットは予定枚数が終了しましたが、本誌読者の方限定で申込受付中です(規定枚数が無くなり次第受付終了)。
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