平成29年度(第68回)芸術選奨の贈呈式が3月13日、東京都内で行われた。音楽部門では、作曲家の近藤譲が文部科学大臣賞を、指揮者の杉山洋一が文部科学大臣新人賞を受賞した。また、舞踊部門では、ダンサーの佐東利穂子が文部科学大臣賞を、バレエダンサーの福岡雄大が文部科学大臣新人賞を受賞した。
(2018.3/13 東京都内 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
近藤譲は、初期から一貫して「線の音楽」という独自の理念に基づき、透徹した思考による創作を楽曲に結実させてきたこと、音と音の関係性を構築できるかを厳格に追求する姿勢は作品のみならず,数々の著作でも示され、後進の現代音楽の作曲家、演奏家へ絶大な影響を与えたことなどが評価されての受賞となった。
昨年10月、若手音楽家たちによって行われた公演「近藤譲 七十歳の径路」が話題を呼んだ近藤は、「今も世界中で作品を演奏してもらっているのは、やはり楽譜の出版というのが大きい。自分自身が考えていることは、基本的には昔とそれほど変わっていないと思いますが、長い間やってきて、聴いてくださる方々が私の語法に慣れてきてくださった、という面はあると思います。私のスタイルに影響を受けた若い作曲家がたくさん出てきているのは嬉しい」とこれまでの活動を振り返った。
杉山洋一は、イタリア・ミラノを拠点に、我が国においてもとりわけ同時代音楽界に欠くべからざる存在としての評価を確立しており、「第27回芥川作曲賞選考演奏会」や「作曲家の個展II 2017」の指揮では余人をもって代え難い大きな成果を挙げたとして評価された。
佐東利穂子は、『トリスタンとイゾルデ』におけるダンスは圧巻。屹立する身体の絶え間ない変容は時空を越え、身体を使って表現するアーティストとして未踏の領域に入った。勅使川原三郎と長年にわたり活動を共にし、身体に対する深い思考によって新たな地平を切り拓き、大きな飛躍を見せた一年として高く評価された。
受賞にあたって佐東は「ダンス以外のジャンルも受賞対象となっている賞をいただいたのは初めてで、とてもありがたく、また恐縮しています。『トリスタンとイゾルデ』は作品自体広く知られた題材で、ダイナミックな音楽によって、ダンスに結びつく“強さ”をより深く表現することができ、私にとって大きな発見でした。いま私に海外から振付依頼がきていて、今後は振付にも挑戦していきたいですし、今回の受賞を励みによりダンスを深めて頑張っていきたいです」と喜びを語った。
福岡雄大は、表現力や主役としての風格の点で急成長を見せており、所属する新国立劇場バレエ団の『コッペリア』フランツ役や『ジゼル』アルベルト役をはじめ、役柄の深い理解によって作品を牽引し、舞台全体の成果を高めるような名演が相次ぎ、日本のバレエ界をリードする存在として、更なる飛躍が期待されるとして評価された。