世界で活躍する若き名手が聴かせる新しい響き
ユーフォニアムは吹奏楽曲ではまろやかな音色でひときわ目立つ楽器だが、この楽器の世界的にも珍しい、女性ソリストとして近年注目を集めているのがミサ・ミード。熊本生まれの新鋭日本人奏者だ。
今回はバッハ「ソナタ ロ短調BWV 1030」ではじまり、ブラジルやスペインなど世界各国の作品を巡って、『B→C』シリーズの中でもとんがったプログラムになった。独奏楽器としての歴史の浅さを逆手に、様々な編成、多彩なコラボで表現の可能性を開拓していこうという姿勢が頼もしい。デッドス「ラタタ!」はスネアドラムとのコミカルなデュオ、ブライアント「ハミングバード」は作曲者自身が入れた鼻歌風の多重録音とユーフォニアムがクールなチェイスを繰り広げる。実験的な作風で世界的に活躍する荒井建にはミサ・ミード自らが新作を委嘱、エレクトロニクスに映像も加わる意欲作が完成した。池辺晋一郎によるマリンバとのデュオ曲を経て、最後はヴォーン・ウィリアムズの歌曲「生命の家」より〈静かな昼〉が、彼女の現在の住まいイギリスのノーブルな気分を薫らせる。共演は清水初海(ピアノ)と大場章裕(パーカッション)。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年4月号より)
2018.4/17(火)19:00
東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
http://www.operacity.jp/