円熟の時を迎え、ベートーヴェン後期3大ソナタと向き合う
JTアートホールアフィニスで、津田真理が3度目のリサイタルを行う。「内装の木目が美しく響きが柔らかい」と愛するこのホールで、2015年のラヴェル、16年のショパンに続き、今年彼女が取り上げる作曲家はベートーヴェンだ。ほとばしる情熱、明確に作品像を浮かび上がらせる冷静な構築力、そうした津田の芸術が、ベートーヴェンの最後の3つのソナタ第30番・31番・32番を描き出す。
桐朋学園、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院で学び、ハンス・ライグラフに師事、国内外のコンクールで優勝を飾り、帰国後は精力的にリサイタルやオーケストラとの共演に活躍してきた津田だが、大病を患い苦しんだ時期もあった。そして今、充実の時を迎えた津田が選ぶベートーヴェンの晩年のソナタは、ロマン的な表情の深みを増し、静かな光をたたえながら、濃密で立体的な書法に満ちている。豊かな津田のタッチで聴く初冬のベートーヴェンに、じっくりと耳を傾けたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2017年11月号から)
2017.12/8(金)19:00 JTアートホール アフィニス
問:パシフィック・コンサート・マネジメント
03-3552-3831
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