ヤツェク・カスプシク(指揮) 読売日本交響楽団

激動の時代が生んだ傑作に名匠たちが対峙


「ヴァインベルクの音楽の価値は明らかだ。彼の音楽を発見したことで、私は尽きることのないインスピレーションの源を得た」。世界最高峰のヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルは、ポーランド生まれのソ連の作曲家ヴァインベルクについてこう語っている。
そのクレーメルが読響との31年ぶりの共演にあたって、日本初演を担うのがヴァインベルクのヴァイオリン協奏曲ト短調である。作曲は1959年。近年のクレーメルは、生前ほとんど国外で知られることのなかったヴァインベルク作品の伝道師のような活躍ぶりを見せている。指揮を務めるのはポーランドの名匠、ヤツェク・カスプシク。母国を同じくするヴァインベルクに共感を寄せる。
ヴァインベルクはショスタコーヴィチと親交を結び、また彼に多大な影響を受けていた。このヴァイオリン協奏曲からも、その影響の強さは伝わってくるはずである。となれば、ヴァインベルク作品と組み合わせるべき作品として、ショスタコーヴィチの問題作、交響曲第4番ほどふさわしい作品もない。その先鋭さゆえに当局からの弾圧を恐れて初演が見送られた作品である。
ともに激動のソ連において時代に翻弄されながら創作活動を続けた作曲家、ヴァインベルクとショスタコーヴィチ。クレーメルとカスプシクというふさわしい才能を得た読響が、作品に込められたひりひりとするような時代の空気を伝えてくれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2017年9月号より)

第571回 定期演奏会
2017.9/6(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/