外山雄三(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

日本の音楽界を牽引する名匠が“古巣”に登壇

外山雄三 C)S.Yamamoto

 N響をはじめとする国内のあらゆるオーケストラを振り、要職を務めてきた外山雄三は、作曲家としても戦後復興期より間宮芳生、林光と「山羊の会」を結成するなど、日本の伝統音楽に着目したオーセンティックな作品を書き続けてきた。作品も相当な数に上り、代表作「管弦楽のためのラプソディー」は国内オケの海外公演では定番曲だ。指揮・作曲両面で戦後日本の音楽界を牽引してきた重鎮も80代半ばとなったが、なお委嘱を受け各地の楽団も振るバリバリの現役なのだから、本当にタフである。
 外山は神奈川フィルでも1992年から96年にかけて第2代音楽監督を務めている。今回、古巣への登壇に外山が選んだプログラムは自作で幕を開ける。戦前から続く長野のオケ、諏訪交響楽団の創立90周年を祝い2014年から15年にかけて書かれた「オーケストラのための“玄奥”」の、首都圏でのお披露目だ。外山の最近の心象風景を伝えるこの近作にも、日本の伝統音楽のテイストが盛り込まれているようだ。
 ここから内省的なウィーンの風格を湛えたシューベルトの「未完成」、さらに雄渾な筆致で書かれたプロコフィエフの大曲「交響曲第5番」へと続く。妥協しないリハーサルで作品を練り上げていくのが外山の音楽作りの特徴だが、作曲家としての眼や地に足を付けた日本的ともいうべきリズム感覚から、よく知られた曲でも作品観を変えてしまう独特なアプローチになることも珍しくない。若いメンバーも多数加入し、熱い演奏で支持を集めている神奈川フィルが、外山の要求にどう応えていくのかも注目だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年7月号から)

第332回 定期演奏会 みなとみらいシリーズ
2017.9/9(土)14:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107
http://www.kanaphil.or.jp/