“ベルカントの新女王”が耳目を奪う!
今年前半の新国立劇場オペラで目を引くのが、新制作のドニゼッティ《ルチア》だ。モンテカルロ歌劇場との共同制作で、2019年に同劇場での上演が決まっている、というだけでも興味津々だが、何と言っても今回は、“ベルカントの新女王”オルガ・ペレチャッコのタイトルロールに熱視線が注がれる。
ロシア生まれの彼女は、フェニーチェ歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座といった第一線の舞台に、《リゴレット》ジルダ、《愛の妙薬》アディーナ、《椿姫》ヴィオレッタ等の主役で次々とデビュー。飛ぶ鳥を落とす勢いでスター街道を駆け上がっている。その魅力は、艶やかで輝かしい美声と最高度の歌唱技術、そして美貌と相まった稀有の存在感にある。特に伸びやかな高音と鮮やかなコロラトゥーラには、ただ惚れ惚れするばかりだ。
《ルチア》で期待の中心はやはり、恋人の裏切りに絶望して狂気に陥ったヒロインが歌う「狂乱の場」。超絶技巧と演技力を駆使しながら10分以上にわたって錯乱状態を表現する、オペラ史上屈指の見せ場だ。ここでペレチャッコが満場を魅せること必至。しかも、通常フルートが受け持つ助奏が指定通りにグラスハーモニカで奏される今回は、幻想味もさらに増す。1〜2月にメトロポリタン、ウィーンに出演後、その勢いのまま日本でのオペラ&新国立劇場初出演を果たすペレチャッコ。世界最注目の歌姫が最高の時期に登場するこの《ルチア》は、文句なしに必見・必聴だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年3月号から)
3/14(火)18:30、3/18(土)14:00、3/20(月・祝)14:00、3/23(木)14:00、3/26(日)14:00 新国立劇場オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/