福井敬と横山幸雄! このレアで豪華な顔合わせの「美しき水車小屋の娘」というだけでも必聴に値するけれど、それが松本隆訳の日本語版となれば期待値は最高ランクだ。熱心なクラシック・ファンなら「ああ、あれか!」と思い当たるはず。2004年にCDが発表されて話題になった企画が再現される。松本は、1970年前後にわずか数年だけ活動した伝説の日本語ロック・バンド「はっぴいえんど」のメンバーとして、その解散後は松田聖子をはじめとする日本歌謡曲界の大ヒット作詞家として、プロフェッショナルに“音楽と言葉”に関わってきた人。クラシック音楽にも造詣が深く、1992年に、「冬の旅」の口語日本語訳を発表した。厳しい商業音楽の最前線で研磨され続けてきた言葉たちが、意味を理解するための和訳ではなく、“歌うことば”として耳になじむ。日本人にとって最も自然で理解しやすい言葉で映し出されるのはしかし、シューベルトとミュラーの描いた原風景だ。
文:宮本 明
(ぶらあぼ 2016年12月号から)
12/6(火)13:30 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/