シモーネ・ヤング(指揮) 東京交響楽団

世界的女性音楽家ふたりが、哀愁の名曲で魅せる!


 女性指揮者を特別視する時代ではないが、やはり“ウィーン・フィルを初めて指揮した女性”と言われれば「おっ」と思ってしまう。そのシモーネ・ヤングが、11月の東京交響楽団の定期とミューザ川崎の名曲全集に登場する。オーストラリア出身でドイツを本拠とする彼女は、2005年〜15年までハンブルク州立歌劇場の総裁兼ハンブルク・フィルの音楽総監督を務め、ウィーン国立歌劇場やベルリン・フィル等に客演。ワーグナーの《ニーベルングの指環》を3つの著名歌劇場で完結させ、ハンブルク・フィルとのブルックナーの全集録音でも話題を呼ぶなど、あらゆる点で女性指揮者を代表する存在だ。
 今回の演目は、ドヴォルザークのチェロ協奏曲とブラームスの交響曲第4番。前者では、バレンボイムが才能に惚れたアリサ・ワイラースタインがソロを弾く。アメリカ出身の彼女もまた、ベルリン・フィル、シカゴ響やマゼール、メータ等と共演している実力者。ドヴォルザークは、本家ビエロフラーヴェク&チェコ・フィルとの録音で、細部まで血を通わせた驚嘆のソロを聴かせており、同曲の日本初演奏に大きな注目が集まる。
 さてヤングの作る音楽やいかに? CDでは、ブルックナーで緻密かつスケールの大きな表現、本演目のブラームスの4番で伝統に囚われない流動的・躍動的な演奏を展開している。そこでまずは東響の緻密さを生かした流麗な名演が期待されるが、独自の個性を主張する彼女だけに、足を運んでみないと始まらないのは確か。ともかくここは、世界的女性音楽家の興味深い演奏で、晩秋に相応しい名曲を堪能しよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

第122回 名曲全集 11/3(木・祝)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
第646回 定期演奏会 11/5(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp