あふれ出る音楽の喜び、グラデーション鮮やかなピアノの響き―― まさに“鍵盤の魔術師”のごとく、芸術と崇高な戯れを繰り広げるシプリアン・カツァリス。ここ数年、自作品およびオーケストラ曲のアレンジを土台とした即興演奏などで聴衆を湧かせる彼が、この秋も充実した内容のリサイタルを行う。
東京の浜離宮朝日ホールでは(10/ 14)「親和力」をテーマに、音楽文化や作曲家たちをつなぐ考え抜かれたプログラムを披露する。たとえば「ゲーテの作品と詩に書かれた作品」という切り口でベートーヴェンの「エグモント序曲」とメンデルスゾーン=リストの「ズライカ」を並べる。「友人同士のマズルカ」としてフォンタナとショパンのマズルカを取り上げる。さらに「ハプスブルク帝国の代表的な舞曲」や「友人同士のプレリュード」という切り口も用意されている。締めくくりはカツァリスの自作品「さよなら ラフマニノフ」だ。
翌日の藤沢市民会館(10/ 15)の公演は、前半でたっぷりとショパンを。ノクターン、ワルツ、ポロネーズ、幻想即興曲などを、カツァリスの馥郁たる音色で味わう。後半は、カツァリスにお任せのアラカルトとでもいおうか、シューマン、J.シュトラウスⅡ、ラヴェル、ラフマニノフなどの彩り鮮やかな作品群。さらには「日本の曲」や、自作の「ありがとう ショパン」も加わるという充実ぶり。ピアノという楽器のあらゆる可能性、音楽史的なスペクタクルをも感じさせてくれるステージになりそうだ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
10/14(金)19:00 浜離宮朝日ホール
問:LEGARE 046-872-4537
10/15(土)15:00 藤沢市民会館
問:茅ヶ崎市楽友協会0467-82-3744
※カツァリスの全国公演(リサイタル、協奏曲、広瀬悦子とのデュオ)については下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.legare-music.info