ベルリオーズの大作に震災後の支援への感謝をこめて
仙台フィルハーモニー管弦楽団が300回目の定期演奏会を記念して、来年4月に東京と仙台でベルリオーズの「幻想交響曲」と「レリオ、または生への回帰」を演奏する。指揮は、同楽団常任指揮者のパスカル・ヴェロだ。
クラシック音楽ファンなら幻想交響曲を知らぬ人はいないだろうが、「レリオ」は名前すら知らない人もいるだろう。だが実はこの2曲、双子の存在で、1829年から30年に起きたベルリオーズの個人的体験に基づいた作品だ。シェイクスピア女優ハリエット・スミッソンへの失恋、その痛手を補うためのピアニストのマリー・モークとの婚約、そしてローマへ留学中のマリーとの破局。
「幻想交響曲は彼が見た悪夢の話。一方、レリオは夢から覚め、現実世界の中で恋愛や仕事での失敗を省みて、自分が生への回帰を果たす過程を描いた物語。ですから、二つで一つの世界を描いている」
2作品で2時間近くになることもあり、全曲を一晩で演奏するのは非常に珍しい。また、語り、アリア、合唱からなる「レリオ」に対して、オーケストラが疾走する幻想交響曲のほうが盛り上がるので、こちらを後に持ってくるコンサートもある。
「今回はベルリオーズが考えた順番で演奏します。ですが、音楽的には確かに、幻想交響曲のフィナーレの後、レリオに入っていくのは困難を伴う。そこで、2つで1つの作品となるような“仕掛け”をしています。それは当日来ていただければわかります!」というように、演出にも力が入る。
テノールのジル・ラゴンとバリトンの宮本益光とは共演済み。250回定期のオペラ《ペレアスとメリザンド》でタイトルロールを歌ったラゴンは、「軽やかさが要求されるベルリオーズでは不可欠」という。
「レリオ」は様々な楽曲から構成されるため、「事前の綿密な練習と準備、そして全体を1つの曲としてまとめあげる点」に注意しなければならない難しさがある。一方、幻想交響曲はヴェロ自身の得意中の得意とする曲だが、今回は「歌や合唱が入る『レリオ』との対比で、また違った幻想交響曲の解釈をお聴かせできるはず」と聴きどころが満載だ。
また、今回のプログラムは、「レリオ」の副題「生への回帰」とあるように震災からの復興への想いも表している。
「節目の演奏会で、このような大きな規模の作品を取り上げられて本当に嬉しい。今後も震災復興のためにも、人々に敬意と力を与えることができる作品を演奏していきたい」と仙台フィルならではのアイデンティティも強調する。来年の春が今から待ち遠しい。
取材・文:山田真一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)
2016.4/15(金)19:00、4/16(土)15:00 日立システムズホール仙台 コンサートホール
問:仙台フィルサービス022-225-3934 2016.2月発売
4/17(日)14:00 サントリーホール 問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
11/26(木)発売
仙台フィル公式ウェブサイト
https://www.sendaiphil.jp