10月29日、「東京・春・音楽祭2027」の概要が発表。東京国立博物館(上野)にて会見が行われ、鈴木幸一(同音楽祭実行委員長)、芦田尚子(事務局長)らが登壇した。

国内最大級のクラシック音楽の祭典として知られ、オペラ、オーケストラ、室内楽など多彩なコンサートを数多く実施する東京春祭。来年は3月19日から4月17日まで開催される。2005年に「東京のオペラの森」としてスタートして以来、上野公園内の東京文化会館を主会場としてきたが、次回は同会館が改修に伴う長期休館中のため、都内近郊のホールへと舞台を広げ、東京芸術劇場、ミューザ川崎シンフォニーホール、日本製鉄紀尾井ホール、浜離宮朝日ホール、TOPPANホールの5つの会場が新たに加わった。有料公演は70公演程度(10/29時点)、無料の「桜の街の音楽会」も含め、今年と同程度の規模が予定されているという。事務局長の芦田は「東京文化会館が再オープンする予定の2029年は、我々にとっては25周年にあたります。戻ってくるまでの間に、都内の皆さんにより親しみを持っていただけるような活動ができれば」と意欲をあらわにした。

東京春祭の目玉、演奏会形式のオペラは東京芸術劇場(池袋)で2演目を上演。おなじみ、N響との「ワーグナー・シリーズ」は、ドイツの名匠 ローター・ケーニヒスによる《タンホイザー》。タイトルロールはヘルデンテノールの新星 サミュエル・サッカーが務める。もう1公演は同年没後200年を迎えるベートーヴェンの《フィデリオ》で、ダーヴィト・アフカムが読響を指揮する。ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(ドン・ピツァロ)、マクシミリアン・シュミット(フロレスタン)ら海外勢が多数出演。また「合唱の芸術シリーズ」は、ミューザ川崎シンフォニーホールで、コンスタンティン・トリンクス指揮、都響&東京オペラシンガーズらによるメンデルスゾーン「エリヤ」が予定されている。
これまで東京文化会館の小ホールを中心に行われていた、国内外の実力派アーティストによるソロや室内楽公演は、都内の3会場で楽しむことができる。
日本製鉄紀尾井ホール(紀尾井町)では、「東京春祭のBeethoven」と題したシリーズを中心に、アニバーサリー・イヤーならではの充実したプログラムを展開。常連の巨匠ピアニスト ルドルフ・ブッフビンダーは、音楽祭初日から4日間にわたり、自ら指名したという二人の弦楽器奏者、島田真千子(ヴァイオリン)&辻本玲(チェロ)とともにソロ・デュオ・トリオと多彩な編成でベートーヴェン作品を披露。ベートーヴェンの命日(3月26日)とその翌日には、三浦謙司(ピアノ)らによる三重協奏曲をはじめ、「田園」、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第7番という管弦楽の超名曲群が室内楽版で演奏される。
浜離宮朝日ホール(築地)では、「歌曲シリーズ」(ベンヤミン・アップル(バリトン)、マクシミリアン・シュミット(テノール)他)や「ディスカヴァリー・シリーズ」(川﨑翔子(ピアノ)によるジェルジ・リゲティ特集)などおなじみのシリーズが行われる他、ベルリン・フィルの第1コンサートマスター ノア・ベンディックス=バルグリーがソロ・室内楽・オケのソリストで大活躍する3公演も。
そして、TOPPANホール(小石川)は、金川真弓(ヴァイオリン)&山下愛陽(ギター)のデュオや、北村朋幹や小林海都らが出演するベートーヴェンの「ピアノ協奏曲 全曲演奏会(室内楽版)」など、フレッシュな面々が魅せる意欲的なコンサートが話題を呼びそうだ。また、これらのホールでは新企画となるマチネ公演「お昼のハルサイ」も開催される。
一方で、上野エリアでの演奏会も変わらず継続される。明治の面影を残す旧東京音楽学校奏楽堂には、カニササレアヤコ(笙[雅楽芸人])、白井圭が結成した珍しい編成のザ・プラーター・クインテットらが登場。音楽祭の最終日は、同会場での加藤洋之&津田裕也(以上ピアノ)のベートーヴェン・プロで締めくくられる。本音楽祭の特長の一つ、上野エリアの美術館・博物館での「ミュージアム・コンサート」も継続、東京国立博物館での「東博でバッハ」や東京都美術館「オルセー美術展所蔵 いまを生きる歓び」展記念コンサートなど、それぞれの会場の個性が際立つ公演が開催される。
本会見では、「東京・春・音楽祭」が今後も安定して発展していけるよう、10月1日付で一般財団法人を設立したことも発表された。来年は実行委員会との共催、再来年以降は同財団が主体となって音楽祭を継続していくという。
鈴木(実行委員長)「来年の音楽祭は、私どもは『流浪の民』という言葉がふさわしいような形になるわけですが、一方で上野には執着していまして(笑)、精神的にはこの場所に軸を置いています。人類の生み出した貴重な芸術であるクラシック音楽の聴衆を、上野を中心になんとか増やしていきたい。そのためにも、この音楽祭が継続的に発展していく仕組みを作ろうと考えたのです」

東京文化会館の休館という大きな転機を迎えながらも、さらなる未来に向け走り出した「東京・春・音楽祭」。来年の桜の季節を心待ちにしたい。
写真・文:編集部
東京・春・音楽祭2027
2027.3/19(金)〜4/17(土)
上野恩賜公園一帯、旧東京音楽学校奏楽堂、東京国立博物館、国立科学博物館、東京都美術館、上野の森美術館、国立西洋美術館、
東京芸術劇場、ミューザ川崎シンフォニーホール、日本製鉄紀尾井ホール、浜離宮朝日ホール、TOPPANホール、三井住友銀行 東館 他
2026.11/15(日)より順次先行発売
https://www.tokyo-harusai.com
