福島康晴&エクス・ノーヴォが聴かせる、ボッケリーニとダストルガの秘曲「スターバト・マーテル」

5月の公演より
中央:阿部早希子 右:福島康晴 ©Studio LASP

 バロック期の宗教的声楽曲をめぐる日本の古楽演奏が近年活況を呈するなか、独自の存在感を示しているのが、福島康晴率いるエクス・ノーヴォだ。2014年に誕生した同団体は、福島のイタリアでの豊富な古楽演奏経験を基に、イタリア古楽を中心とした演奏活動を展開している。

 彼らが今年集中して取り上げている曲種が「スターバト・マーテル(悲しみの聖母)」。磔刑に処せられたイエス・キリストを十字架のもとで見守る聖母マリアの悲しみに寄り添う、中世の祈りの詩に基づく声楽曲だ。この詩には多くの作曲家が作曲し、古くはジョスカン・デ・プレやパレストリーナ、ロマン派以降もドヴォルザークやヴェルディ、現代のグレツキ、ペルトらの名品が生み出されている。

 エクス・ノーヴォは、5月に行った第1回ではこの曲種の中でも高い名声を誇るペルゴレージとボノンチーニ(ヘンデルのライバルで有名)を取り上げたが、今回はボッケリーニ(1781年作)とダストルガ(1727年頃作)。2人ともイタリアに生まれスペインで没した。ボッケリーニはソプラノ独唱をフィーチャーし、精妙で繊細な音楽の運びが魅力。名チェリストならではのチェロ・パートの活躍もある。現存作品の少ないダストルガはまさに秘曲だが、バロック期の逸品で、悲しみのみならず穏やかな癒しの空気も漂う。充実した声楽・器楽陣の演奏で祈りの時を過ごしたい。

文:矢澤孝樹

(ぶらあぼ2026年10月号より)

エクス・ノーヴォ vol.24 《スターバト・マーテル ~悲しみの聖母~》シリーズ2
2026.10/31(土)14:00 Hakuju Hall
問 ムジカキアラ03-6431-8186
https://exnovo.jp


矢澤孝樹 Takaki Yazawa

1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。