実力を勢いに変え、文字通り破竹の勢いで活躍する2人の共演盤は、今年2月に東京文化会館で行われたライブ録音。改修休館直前の同館の響きの記録という点でも意義深い。歴史あるホール。しかし2人の視線はあくまで前を向く。前田妃奈は獰猛なまでの表現の塊だ。プーランクのソナタは襲い掛かるような切迫感。ストラヴィンスキーはチャイコフスキーの仮面を被った作品の向こうから作曲者の生の熱情が立ち昇る。そしてフランク、ポルタメントも交えて燃焼度が高い。いっぽう久末航のピアノもシャープに切り込みつつ、俯瞰の眼差しを失わない。聴衆の熱狂的拍手も納得、ライブの醍醐味だ。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年8月号より)
【information】
CD『前田妃奈 × 久末航 LIVE Concert 2026』
プーランク:ヴァイオリン・ソナタ/ストラヴィンスキー(ドゥシュキン編):バレエ音楽「妖精の口づけ」よりヴァイオリンとピアノのためのディヴェルティメント/フランク:ヴァイオリン・ソナタ
前田妃奈(ヴァイオリン)
久末航(ピアノ)
収録:2026年2月、東京文化会館(小)(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00921 ¥3520(税込)

矢澤孝樹 Takaki Yazawa
1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。



