沖澤のどか&京都市交響楽団の音楽づくりを間近で学ぶ、「“世界にはばたく指揮者”育成プロジェクト」が実施

 2023年の常任指揮者就任以来、着実に信頼関係を深める沖澤のどかと京都市交響楽団。楽団の創立70周年となる今年は注目の公演が目白押しとなっているが、その中でもひときわ目を引くのが、沖澤が指揮する「プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会」だ。ツィクルスで取り上げられることは珍しいプロコフィエフの7曲のシンフォニーを、1年の間に全3回の公演で番号順に演奏する。この稀有な取り組みの裏側で、「“世界にはばたく指揮者”育成プロジェクト」があわせて実施されている。各地の音楽大学と連携し、プロを目指す若手指揮者に、リハーサルから沖澤とコミュニケーションを取りながらその音楽づくりを間近で学ぶ機会を提供するというものだ。

中央:沖澤のどか
左:籔本繁倫(京都市立芸術大学 音楽学部 指揮専攻4回生) 右:森田龍舞(京都市立芸術大学 音楽学部 指揮専攻3回生)
(以上、“世界にはばたく指揮者”育成プロジェクト選抜生2名)
©京都市交響楽団

 5月3日に京都コンサートホールで行われる「プロコフィエフの陣 『壱』」では、地元・京都市立芸術大学の学生2名が選抜。この公演では有名な交響曲第1番「古典」、そして実演の機会が少ない第2番と第3番の3曲が取り上げられる。4月30日の練習初日から早速、通常のリハーサル見学では体験できない、パート譜のチェックや沖澤との意見交換などが行われた。今後は練習の流れによって、実際に指揮台に立つ可能性もあるという。

©京都市交響楽団

 リハーサルを終え、囲み取材に臨んだ沖澤は、このプロジェクトにかける思いを次のように語った。

「私が今回参加してくれているお二人ぐらいの年齢のときは、ちょうどドイツに留学したころだったと思います。高校を卒業してすぐに東京藝術大学に入学しましたが、そこでかなり落ちこぼれまして、指揮者を諦めようかと思ったこともありました。ですが、下野竜也先生に拾ってもらったのを機に様々なマスタークラスを受け始め、オーケストラ・アンサンブル金沢での講習会で井上道義先生に気に入っていただいて、指揮研究員という立場を用意してくださったのです。指揮のアシスタントと事務局員として1年半、研鑽を積みました。
 その中で、当時ミュージックパートナーを務めていた山田和樹さんがプロコフィエフの交響曲第1番を取り上げる演奏会があったのですが、リハーサル2日目ぐらいに『じゃあ1楽章を振ってみてください』といきなり言われたんです。前日、『なかなか指揮する機会がないんですよ』とちょっと愚痴っていましたが(笑)、まさか実際に振らせていただけるとは思ってもいなくて。山田さんが振った時と明らかにオーケストラの音が違うことに打ちのめされましたが、それもやっぱり実際に指揮台に立ってみないとわからないことだったと思います。その後、ベルリン・フィルでもアシスタントを経験しましたが、金沢時代、若いころに学んだことというのは本当に忘れないですね」

©京都市交響楽団

「講習会を受け始めたころ、下野先生はよく『指揮は教えられるものではないから、自分が現場でもがく姿を見て、そこから学んでほしい』とおっしゃっていました。当時はご謙遜されていると思っていましたが、自分がその年齢に近づいてみて、やはりうまくいかないことの方が圧倒的に多い。その姿を見てほしいのです。いくら巨匠のリハーサルに行って学ぶことがあったとしても、そこにたどり着くまでの過程は見えない。私のような若手指揮者が、現場でどうもがいているのかを見て学べることは多いと思います。ですので、このプロジェクトでは指揮そのものを教えるということは考えていません。オーケストラの現場にはどんな人がいて、誰が何を話しているのか、そしてどういう風にコンサートが作られているのか。私だけでなく、楽団員さんや事務局の方ともコミュニケーションを取りながら、そういったことを全体として知っていってほしいと思います」

©京都市交響楽団

 今後行われる「弐」(7月)「参」(11月)では、東京音楽大学や東京藝術大学などからの参加も予定されているという。沖澤&京響コンビによる渾身のプロコフィエフ・ツィクルス、その音楽づくりを“見て盗んだ”日本の若者の中から、世界にはばたくマエストロが誕生するのを心待ちにしたい。

文:編集部
写真提供:京都市交響楽団


京都市交響楽団 70周年記念事業
プロコフィエフの陣~交響曲全曲演奏会「壱」

2026.5/3(日・祝) 14:30 京都コンサートホール

♪出演
沖澤のどか(指揮)

♪曲目
プロコフィエフ:
 交響曲第1番 ニ長調 op.25 「古典」
 交響曲第2番 ニ短調 op.40
 交響曲第3番 ハ短調 op.44

京都市交響楽団
https://www.kyoto-symphony.jp