川口リリアが再始動! 話題のアーティストが続々登場するリオープン記念公演の聴きどころ

 2024年3月から26年3月までの2年間にわたる大規模改修を終えた川口リリアが、この7月にグランドオープンを迎える。メインホールおよび音楽ホールは、座席の入れ替えや天井の改修、バリアフリー化により一段と快適で響きの良い空間に生まれ変わったという。

英国ロイヤル・バレエ団 ©Alice Pennefather / RBO

 リオープン記念公演には驚くほど豪華なラインナップが並んでいる。目玉企画としてまっさきに挙げたいのは、英国ロイヤル・バレエ団の来日公演。世界最高峰として名高いバレエ団が3年ぶりの来日を果たす。会場は川口リリアとNHKホールのみ。リリアでは、イギリスを代表する名匠フレデリック・アシュトン振付による『リーズの結婚』が上演される。農村の若い恋人たちをめぐる騒動を描いたロマンティック・コメディの名作だ。7月3日より5公演にわたって開催され、各公演ごとに異なるキャストが出演する。ピットに入るのは、ホセ・サラサール指揮東京シティ・フィル。

左より:濱田芳通/小松亮太/ケヴィン・チェン ©rajchert lukasz/エマニュエル・パユ ©Anoush Abrar

 また、2023年に大きな話題を呼んだふたつの公演、濱田芳通指揮アントネッロによるバッハ「マタイ受難曲」と小松亮太によるピアソラの大作《ブエノスアイレスのマリア》が再演される。濱田とアントネッロはこれまで川口リリアを舞台に数々の名演をくりひろげてきた。作曲当時の奏法や上演習慣を尊重しながらも、枠にとらわれることなく、現代人の感覚に強く訴えかける生命力にあふれたバロック音楽を生み出すのが彼らの大きな魅力だ。今回もまた、今のわたしたちがまっすぐに向き合うべき「マタイ受難曲」を体験させてくれるにちがいない(10/3, 10/4)。福音史家の中嶋克彦、イエスの坂下忠弘ら、万全のキャストがそろう。ピアソラの《ブエノスアイレスのマリア》では、小松亮太のバンドネオン、SayacaとKaZZmaの歌、片岡正二郎の語り、黒田亜樹のピアノほかが集結。ブエノスアイレスに生きる女性マリアの愛と転落、死と再生が象徴的な物語として描かれる。ピアソラが「タンゴ・オペリータ(小オペラ)」と呼んだ異色の大作に立ち会う貴重な機会がふたたび巡ってきたことを喜びたい(9/12, 9/13)。

左より:吉野直子 ©Akira Muto/牛田智大 ©Ariga Terasawa/ゲヴァントハウス弦楽四重奏団

 旬のソリストたちの登場も大きな話題を呼びそうだ。ショパンコンクールで第2位を獲得したケヴィン・チェンは、ショパン、スクリャービン、リストを組み合わせたプログラムを披露する(10/11)。チェン自身の編曲によるリストの交響詩「レ・プレリュード」は聴きもの。フランスのバンジャマン・アラールは、オール・バッハ・プログラムによるオルガン・リサイタルを開く(10/10)。バッハの鍵盤作品全曲録音に取り組む新世代を代表する名手の登場だ。エマニュエル・パユと吉野直子のデュオ・リサイタル(12/4)では、フルートとハープの清澄な音色を堪能したい。これ以上はないという強力なデュオだろう。躍進を続けるピアニスト、牛田智大はドイツのゲヴァントハウス弦楽四重奏団と共演する(27.2/13)。室内楽ならではの親密な音の対話を期待できそうだ。室内楽では「辻彩奈・上野通明・小林愛実トリオ」も楽しみ。ソリストとして高い人気と実力を誇る3人が一堂に会するぜいたくな公演だ(3/28)。また、リリア音楽ホール リオープンセレブレーションとして、ふたつのガラ・コンサートが開かれる。Vol.1(26.11/21)では福田進一、大萩康司、朴葵姫、徳永真一郎の4人のギタリストが、Vol.2(27.3/27)では横山幸雄、久末航、小林海都、吉見友貴の4人のピアニストが集結。ベテランから若手まで、実力者がそろう。

左より:辻 彩奈 ©Makoto Kamiya/上野通明 ©Seiji Okumiya/小林愛実 ©Shuhei Tsunekawa

 ほかにもユッカ=ペッカ・サラステ指揮ヘルシンキ・フィル&角野隼斗(26. 10/12)や、小曽根真の「クリスマス・スペシャル」(12/18)など、華やかな公演が目白押しとなっている。東京からもアクセス抜群の川口への注目度が格段に高まりそうだ。

文:飯尾洋一

(ぶらあぼ2026年4月号より)

問:リリア・チケットセンター048-254-9900 
https://www.lilia.or.jp
※ラインナップの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


飯尾洋一 Yoichi Iio

音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 https://www.classicajapan.com/wn/