
5月の東京フィル定期は、首席指揮者アンドレア・バッティストーニが、シューマン(バッティストーニ編)の「子供の情景」(世界初演)と、マーラーの交響曲第4番を披露する。怪我等でキャンセルが続いたバッティストーニだが、今年2月の東京二期会《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》の公演で、生気漲るドラマティックな演奏を聴かせ、皆を安心させた。ならば当然、本公演への期待は大いに膨らむ。
演目も実に興味深い。まず人気のピアノ曲「子供の情景」の管弦楽版は前代未聞。彼は事前の記事で、「シューマンに共感するのは『音楽は物語である』という考え」であり、「『子供の情景』は彼が小品でこそ才能を発揮することを示す代表例」と述べているので、シンパシーに満ちた演奏が展開されるであろうし、「トロイメライ」をはじめ可憐な幻想味が漂うこの曲を、作曲家でもあるバッティストーニがいかに編曲するか?がむろん注目点となる。本人は「室内楽的な親密さを保つ響きを目指した」と語っているが、ピアノ演奏とは異なる新鮮な感触への期待もまた大きい。
バッティストーニはマーラーの交響曲第4番に関しても「失われた子供時代の余韻」と述べている。つまりこれは一貫性のある選曲だ。同作曲家の交響曲の中では小ぶりで清洌な本作だが、管弦楽の綾や各種のソロも聴きものだし、第4楽章に天上の歌をうたうソプラノ─独唱の高橋維の清澄かつよく通る美声ももちろん楽しみ─が入る当曲では、声楽付き作品に実績のあるバッティストーニの語り口の巧さが生きること必至。今回は夢幻的な音楽に終始身を委ねたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年4月号より)
アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1030回 サントリー定期シリーズ
2026.5/13(水)19:00 サントリーホール
第1031回 オーチャード定期演奏会
2026.5/17(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。

