
国内最大級の室内楽の祭典、「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)」。今年は6月5日から20日までの16日間、全24公演が「ブルーローズ(小ホール)」で開催される。
文:林 昌英
◆満を持して初登場!エベーヌQによるベートーヴェン全曲
エベーヌ弦楽四重奏団がチェンバーミュージック・ガーデンにやってくる!
毎年6月の風物詩となったCMG、今年最大の話題は、何といってもエベーヌQの登場。しかも名物企画「ベートーヴェン・サイクル」6公演でベートーヴェン全曲を弾くのである。
水も漏らさぬ精度のアンサンブル。それでいて親密さと歌心にも満ち、音楽の喜びを体現する。1999年の結成から最前線を走り続け、いまや世界最高峰カルテットと断言できる屈指の存在である。2年前にチェロが岡本侑也に交代して新風が吹きこまれ、4人が深く馴染んできた時期に集中して聴けるのも楽しみだ。
サントリーホール開館40周年の記念年にこの上なくふさわしい大型企画。とにかく「何をおいても聴くべし!」と言うほかないが、やはり全公演とも早々に完売とのこと。幸運にもチケットを入手できた方は、カルテット史上最高峰の作品と団体によるサイクル、万全の状態で楽しまれますように!
◆常連・小菅優の深い洞察が光るステージ
ピアニスト小菅優によるプロデュース公演もCMGの名物企画となっている。今年は意義深いテーマの2公演。まず「音楽朗読劇『借りた風景』」(6/14)は、藤倉大作曲の表題作の日本語上演で、「被爆ピアノ」をテーマに芸術と戦争、そして平和を考える内容だという。演奏は小菅、ヴァイオリン金川真弓、コントラバス幣隆太朗。朗読は舞台やテレビで活躍する横山友香、酒向芳、くまさかりえ。昨秋新国立劇場《ヴォツェック》表題役で見事な代役をつとめたバリトン駒田敏章が朗読と演出を担当する。

右:金川真弓 ©Victor Marin
もう一つは「仲間たち」との室内楽(6/17)。小菅と金川に、ヴァイオリン毛利文香、チェロのベネディクト・クレックナーが、シェーンベルク「浄められた夜」ピアノ三重奏編曲版とコルンゴルトの実演機会稀少な「2つのヴァイオリン、チェロ、ピアノ(左手)のための組曲」を奏でる。ウィーン生まれのユダヤ人で、アメリカに逃れざるを得なかった二人の美しい作品に浸る時間。
◆日本&ドイツ、2つのアカデミーでの実りを聴く
日本と世界の代表的なアカデミーの成果をCMGで体験できる。日本の「サントリーホール室内楽アカデミー」は、名匠たちが指導者となり、長期間にわたり受講者(フェロー)たちに室内楽の基礎と極意を伝えている。各年度の同アカデミー修了生による「フェロー演奏会」(6/6, 6/13)が開かれ、優秀な若手奏者たちが幅広い曲目で学びの成果を聴かせるのもCMGならでは。

そして、同アカデミーから羽ばたき、いまや世界で活躍するステージに手をかけているのが、葵トリオとクァルテット・インテグラ。両団の公演もおなじみとなっており、今年の葵トリオ(6/11)の7年プロジェクト第6回はベートーヴェンに、武満とラヴェルの組み合わせでトリオ作品の幅広さを伝える。Qインテグラ(6/14)は、東京クヮルテットの伝説的ヴィオラ奏者で名教師の磯村和英を迎えて、モーツァルトとドヴォルザークの弦楽五重奏曲を。

右:MINAMI ©Yoshihiro Yoshida
「クロンベルク・アカデミー」の日本ツアー公演も注目だ。世界中から多くのアーティストが集う世界的アカデミーのひとつで、指導者は今回出演するミハエラ・マルティン、フランス・ヘルメルソン、そして今井信子といった世界的名手たち。今回は昨年ベルリン・フィルでのトライアルが開始したヴァイオリニストMINAMIをはじめ、同アカデミーで学ぶ若手奏者たちも集結。ドヴォルザークのピアノ五重奏曲ほか(6/18)、シューベルトの弦楽五重奏曲ほか(6/20)、2回の多彩な名曲プログラムで、講師陣とアカデミー生たちが世界水準を示す。
◆世界の第一線に立つ日本人音楽家たち
海外では多くのアンサンブルで日本人奏者が活躍している。岡本侑也のエベーヌQ加入はその顕著な例だが、今回は日本人の加わるアメリカの名門2団体も登場する。

まず、テューバの杉山康人がメンバーの、クリーヴランド管弦楽団金管五重奏(6/8)。杉山はウィーン、クリーヴランドと最高峰の場で吹き続けてきた、わが国を代表する金管奏者である。続いて、ピアノの相沢吏江子を中心とする、ホルショフスキ・トリオ(6/19)。20世紀の大ピアニストの名前を冠した、ニューヨークを拠点に活動するピアノ三重奏団で、CMG初登場となる。
サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン
2026.6/5(金)〜6/20(土) サントリーホール ブルーローズ(小ホール)
【CMGオープニング 堤 剛プロデュース 2026】
2026.6/5(金)19:00
伊藤悠貴、笹沼 樹、堤 剛、横坂 源(以上チェロ)、須関裕子(ピアノ)
【J.S.バッハとシューベルト~チェロ・ピッコロと歴史的鍵盤楽器】
6/7(日)15:00
酒井 淳(チェロ・ピッコロ)、渡邊順生(ポジティフオルガン&フォルテピアノ)
【プレシャス 1pm】
Vol.1 満ちていく彩り
6/8(月)13:00
白井 圭(ヴァイオリン)、吉野直子(ハープ)
Vol.2 日本音楽トランジション
6/11(木)13:00
J-TRAD Ensemble MAHOROBA(邦楽アンサンブル)、本條秀太郎(三味線) 他
Vol.3 フルートが誘う室内楽の旅路
6/16(火)13:00
工藤重典(フルート)、横坂 源(チェロ)、萩原麻未(ピアノ)
Vol.4 フランスのチェロ・ソナタ
6/19(金)13:00
小山実稚恵(ピアノ)、堤 剛(チェロ)
【BRASSの華 クリーヴランド管弦楽団金管五重奏】
6/8(月)19:00
【エベーヌ弦楽四重奏団 ベートーヴェン・サイクル】【完売】
I. 6/9(火)19:00 II. 6/10(水)19:00 III. 6/12(金)19:00 IV. 6/13(土)18:00 V. 6/15(月)19:00 VI. 6/16(火)19:00
【葵トリオ ピアノ三重奏の世界~7年プロジェクト第6回】
6/11(木)19:00
【クァルテット・インテグラの五重奏~磯村和英を迎えて】
6/14(日)11:00
【小菅 優プロデュース 音楽朗読劇『借りた風景』】
6/14(日)19:00
金川真弓(ヴァイオリン)、幣 隆太朗(コントラバス)、小菅 優(ピアノ)、横山友香、酒向 芳、くまさかりえ、駒田敏章(以上朗読、演出)
【小菅 優と仲間たち】
6/17(水)19:00
金川真弓、毛利文香(以上ヴァイオリン)、ベネディクト・クレックナー(チェロ)、小菅 優(ピアノ)
【クロンベルク・アカデミー 日本ツアー 2026】
I. 6/18(木)19:00 II. 6/20(土)13:00
[講師]ミハエラ・マルティン(ヴァイオリン)、今井信子(ヴィオラ)、フランス・ヘルメルソン(チェロ) [在校生]MINAMI(吉田 南)(ヴァイオリン) 他
【ホルショフスキ・トリオ ピアノ三重奏の核心】
6/19(金)19:00
【ENJOY! 室内楽アカデミー・フェロー演奏会】
I. 6/6(土) II. 6/13(土)各日11:00 カルテット・プリマヴェーラ、トリオ・フィデーリス 他
【CMGフィナーレ 2026】
6/20(土)19:00 原田幸一郎(ヴァイオリン)、磯村和英(ヴィオラ)、堤 剛(チェロ)、葵トリオ、クロンベルク・アカデミー 他
問:サントリーホールチケットセンター0570-55-0017(10:00~18:00、休館日を除く)
suntoryhall.pia.jp
CMG 2026特集ページ
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