新音楽監督・藤倉大が語る、これからのいずみシンフォニエッタ大阪

左:藤倉 大 ©Alf Solbakken
右:飯森範親 ©山岸 伸

 音楽監督・西村朗(現名誉音楽監督)の急逝を受け、2024年10月に新音楽監督として作曲家、藤倉大を迎えたいずみシンフォニエッタ大阪(ISO)。その就任後初めての演奏会となる、第55回定期に向けた記者会見が25年12月に大阪市内で行われた。藤倉と常任指揮者の飯森範親が登壇し、ISOのこれからを見据えつつその第一歩を示す演奏会について語った。

 今回の目玉の一つと言えるのが、世界中の30歳以下の作曲家を対象に行われた作品の一般公募。関係者とISOメンバー全員の譜面審査の結果、山梨県在住の27歳、渡邉翔太の「朧げな風景の中でⅠ」が選ばれ、世界初演される。

 「既存の作曲賞やコンクールみたいに堅苦しいものではなくて、何か面白い作品があったら送ってね、といった意味での公募。これからも機会があれば行いたいと思っているので、そこで若い作曲家たちが僕らとつながって可能性を広げていってくれれば」と藤倉。飯森もまた「今回は2作品が拮抗した。最終的に残らなかった作品もすごく良い曲だったから、彼らにはこの先もぜひ僕らとつながっていてほしいという思いがある」と声を揃える。

 プログラムの中心となる藤倉の「箏協奏曲」について、飯森は「この楽器の魅力と性能を熟知して書かれた、オーケストラによって箏のモチーフが最大限に活かされた作品」と語る。今回はISOの編成に合わせたアンサンブル版を演奏。ソリストの片岡リサにも注目だ。

 本公演ではこの「箏協奏曲」や、藤倉が自身のプロデュースする音楽祭「ボンクリ・フェス」(東京芸術劇場)などで多く取り上げてきたオリヴェロスの作品ほかで楽団の新しいカラーが打ち出される。一方で西村朗の「オルゴン」やコンサート・アドバイザー、川島素晴の「ピチェクラリン讃歌」といった作品も選曲され、これまでのISOをリスペクトするものともなった。藤倉は「強弱から速さ、スタイルまですごくコントラストがあるプログラム。これを聴いたら数ヵ月は他の現代音楽のコンサートは聴かなくても大丈夫」とユーモア交じりに語りつつ、「西村さんの音楽はISOにとって特別なもの。新入生の僕よりもきっとメンバーの人たちの方がたくさんの作品の思い出やエピソードをお持ちのはずなので、曲目は皆さんに選んでいただいて、オーケストラに限らずいろいろな作品を取り上げていきたい」と、今後の西村作品の積極的な演奏に意欲を見せる。

 会見の後半には活発な質疑応答が行われた。ロンドンを拠点にワールドワイドに活躍する藤倉が、大阪を本拠とするISOを世界に向けてどのように発信していくのか? そう問われた藤倉は「各国の演奏団体との共同委嘱も考えながら、彼らと積極的な交流を図っていきたい」と答えた。「そうすることでISOと世界のアンサンブルがつながる。そこでISOの名前が出るということはブランディングとしてとても重要だと思う」。こうした動きはすでに始まっており、その中から10月には藤倉の企画により、ISOがポーランドの現代作曲家、ピアニストであるジグムント・クラウゼの日本初演作品を取り上げる演奏会も決定している。

 藤倉の就任により新しい可能性を見出したいずみシンフォニエッタ大阪がこの先、どのような進化を遂げていくのか。第55回定期はその最新の姿が明らかとなる、重要な演奏会となることだろう。

文:逢坂聖也

(ぶらあぼ2026年2月号より)

いずみシンフォニエッタ大阪 第55回定期演奏会
これからの世界、これからのいずみシンフォニエッタ大阪
2026.2/11(水・祝)16:00 大阪/住友生命いずみホール
問:住友生命いずみホールチケットセンター06-6944-1188 
https://www.izumihall.jp


逢坂聖也 Seiya Osaka

大阪芸術大学卒業後、大手情報誌に勤務。映画を皮切りに音楽、演劇などの記事の執筆、配信を行う。
2010年頃からクラシック音楽を中心とした執筆活動を開始。現在はフリーランスとして「ぶらあぼ」「ぴあ」「音楽の友」などのメディアに執筆するほか、ホールや各種演奏団体の会報誌に寄稿している。
大阪府豊中市在住。