最新録音なのに、どこか昔の名手の演奏のよう。そして聴き続けると、独特の粘り気のある節回しが奏者本人の記名性を伝えてくる。ソモラ・ティボールは1983年生まれ。本人が誇りを持って呼ぶ「ジプシー音楽の一家」の出自だ。クラシックのヴァイオリニストとして一流の経歴を持っているが、民俗音楽の演奏伝統から得た血の濃い表現が印象的。この方向性だとコパチンスカヤが突出した個性だが、こちらはもう少し穏やかに、サラサーテやヴィエニャフスキに土の香りをまとわせる。フバイ「ゼフィール」の幻想的な趣が魅力的。バルトークやコダーイの秘曲も聴ける。藤井亜紀が好サポート。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年2月号より)
【information】
CD『ラプソディー/ソモラ・ティボール』
バルトーク:ラプソディー第1番/フバイ:ゼフィール/ヴィエニャフスキ:スケルツォ・タランテラ/サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン/モンティ(ソモラ編):チャールダーシュ/コダーイ:アダージョ 他
ソモラ・ティボール(ヴァイオリン)
藤井亜紀(ピアノ)
コジマ録音
ALM-7324 ¥3300(税込)

矢澤孝樹 Takaki Yazawa
1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。


