
12月12日、広島交響楽団が2026年度シーズン(26年4月~27年3月)の公演ラインナップを発表した。
音楽監督クリスティアン・アルミンクとの3年目のシーズンは、テーマを“STORIES”とし、全11公演の定期演奏会に、物語を由来とする名作がちりばめられた。
アルミンクは定期演奏会に3回登壇する。シーズン・テーマの通り、9月はR.シュトラウス「ドン・ファン」、ツェムリンスキー「人魚姫」など、物語を基に書かれた独墺作品を選曲。
1月にはヤナーチェクの歌劇《死者の家から》組曲に加え、コンポーザー・イン・レジデンスの細川俊夫による初のコントラバス協奏曲(委嘱作品・世界初演)が、ベルリン・フィルのエディクソン・ルイスの独奏により初演される。
5月には特別定期に出演。14歳の天才ヴァイオリニストHIMARIをソリストに迎え、オール・モーツァルト・プログラムが組まれた。今年3月のベルリン・フィルを筆頭に、フィラデルフィア管、スイス・ロマンド管、シカゴ響など名門へのデビューが続くHIMARIだが、広響とのモーツァルトの協奏曲第1番ではどんなパフォーマンスを披露してくれるのだろうか。組み合わせるのは第29番、第36番の二つの交響曲。
アルミンクはさらに、ベートーヴェンを特集する「シン・ディスカバリー・シリーズBeethoven+(plus)」(全4公演)でもタクトをとる。2027年の没後200年に向け、26年度、27年度の2シーズンで全交響曲を取り上げる。来季は第1番〜第6番「田園」に、戦後ドイツを代表するヴォルフガング・リーム、生誕100年を迎えるハンガリーのクルターグなどの現代作品を“+(プラス)”する。
客演指揮者で注目は10月のジョナサン・ノット。ショスタコーヴィチの交響曲第9番に、20世紀のポーランドを代表する現代作曲家アンジェイ・パヌフニクと娘ロクサンナの共作「祈り」を組み合わせる。戦時中はナチスに、戦後はソ連の抑圧に立ち向かい、イギリスで作曲家としての地位を確立したアンジェイ。同国を母国とするノットが広島の地でこれらをどのように描くのか。
7月定期には、先日ボストン響にデビューを飾った沖澤のどかが登場。プーランク「シンフォニエッタ」をメインにストラヴィンスキー「プルチネッラ」、プロコフィエフ「古典」交響曲という新古典主義の3作で切れ味鋭いタクトを披露してくれるだろう。
他にも、5月に母国アメリカを代表するコープランドの3作品を指揮するジョン・アクセルロッド、「プレミアム定期」と銘打たれた11月に、世界的ヴァイオリニスト ヴィクトリア・ムローヴァとともに出演するユベール・スダーン、2月にフランス音楽とストラヴィンスキー「火の鳥」を組み合わせるパスカル・ロフェら名匠たちの登場も見逃せない。
被爆地・広島が祈りに包まれる8月6日前後に開催する「平和の夕べ」コンサート。来季はマティアス・バーメルトがタクトをとる。地元出身の萩原麻未が、第一次世界大戦で右手を失ったピアニストのために書かれたラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲、萩原の公私にわたるパートナー・ヴァイオリンの成田達輝が、コロナ禍やウクライナ侵攻で混迷を極める中、細川俊夫が作曲したヴァイオリンとオーケストラのための「祈る人」でソリストを務める。メインにはフランクの交響曲 ニ短調を据える。
ソリストには、先述のムローヴァをはじめ、小曽根真(ピアノ)、ラインホルト・フリードリヒ(トランペット)ら、世界トップ・クラスの名手のほか、金川真弓(ヴァイオリン)、上野通明(チェロ)、五十嵐薫子(ピアノ)ら日本期待の俊英も名を連ねる。
広島の地に根差し、音楽活動を続けてきた広響。2026年度もまた、多様な“物語”を携えて聴衆に向き合う。

広島交響楽団
http://hirokyo.or.jp



