60周年!名古屋フィルの2026-27シーズン・ラインナップ発表会見に川瀬賢太郎が出席

欧州2都市を巡るツアーも

左より:冷水乃栄流、川瀬賢太郎、犬塚力(名古屋フィル理事長)
写真提供:名古屋フィルハーモニー交響楽団

 10月30日、名古屋フィルハーモニー交響楽団が創立60周年を迎える2026年4月-27年3月シーズンのラインナップを発表した。会見には音楽監督の川瀬賢太郎、第5代コンポーザー・イン・レジデンスに就任する冷水乃栄流(ひやみず・のえる)らが出席した。

 来季最大のトピックは、同楽団にとって2004年以来となるヨーロッパ公演。1月定期演奏会(27.1/15,1/16)の後、東京特別公演(1/20)を経て、名古屋市の姉妹都市であるランス(フランス)とトリノ(イタリア)を訪問。川瀬の指揮で、ショスタコーヴィチの交響曲第5番、芥川也寸志「弦楽のための三楽章(トリプティーク)」のほか、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲(独奏:ボムソリ、1月定期&ランス)、コンサートマスター小川響子を擁するピアノ三重奏団「葵トリオ」独奏によるカゼッラの三重協奏曲(東京&トリノ)が予定されている。名古屋フィルの音楽的成熟を国内外に示す節目の舞台となる。

 定期演奏会は愛知県芸術劇場コンサートホールで11プログラムを展開。川瀬はそのうち3公演を指揮する。
 5月にはマーラーの交響曲第10番(クック版・全曲)に挑む(5/15,5/16)。マーラーが残した未完の交響曲を、音楽学者のデリック・クックが補筆完成させた全5楽章版だ。
川瀬「サイモン・ラトルの演奏に憧れていつか取り上げてみたいと思っていました。ずいぶん前からこの版のことは知っていて楽譜も持っていたのですが、ようやく叶います」

 10月には地元出身の特別客演コンサートマスター山本友重をソリストに迎え、ブルッフ「スコットランド幻想曲」を取り上げる(10/9,10/10)。
 川瀬は、かつて山本が「この曲はたまらない!」と話していたのを覚えていたそうで、「共演するならこの作品を」と願っていたという。この曲の前後には、スコットランドの現代作曲家 ジェイムズ・マクミランの「ブリタニア」とブラームスの交響曲第2番を配置する。

 新コンポーザー・イン・レジデンスの冷水乃栄流は1997年生まれ。芥川也寸志サントリー作曲賞最終候補・聴衆賞受賞、第89回日本音楽コンクールで第2位に入賞など注目を集めている。3月定期では、フランスの新鋭 アドリアン・ペルションの指揮で新作の初演が予定されている(27.3/12,3/13)。
 会見では「世界で再演されるオーケストラ作品を書きたい。伝統と現代の響きを融合し、地域や学校との共創にも挑戦したい」と熱い意気込みを語った。

 シーズン開幕を飾るのは、現在89歳の名匠ジャン=クロード・カサドシュが指揮するベートーヴェンの交響曲第7番とストラヴィンスキー「春の祭典」(4/10,4/11)。6月には日本を代表するオペラ指揮者・沼尻竜典の指揮でプッチーニ《トスカ》(演奏会形式)を上演。2004年《蝶々夫人》以来のオペラ作品の全曲上演として注目を集めそうだ(6/12,6/13)。小泉和裕(名誉音楽監督 11/13,11/14)、小林研一郎(桂冠指揮者 7/3,7/4)らポストを持つ名匠も登場する。

 また、建て替えを控える日本特殊陶業市民会館では、27年度末の閉館を見据えた「カウントダウン・シンフォニー」と題する全5回の名曲シリーズを実施。ショスタコーヴィチ10番(5/29 下野竜也)、ブルックナー9番(8/26 ゲオルク・フリッチュ)、ドヴォルザーク8番(9/24 川瀬)、シベリウス7番(12/1 尾高忠明)、チャイコフスキー6番「悲愴」(27.3/17 ペルション)をリレーし、来季の5公演につなげる。

 そのほか、「第九演奏会」(12/18,12/19)や2回目の開催となる「愛知4大オーケストラ・フェスティヴァル」(9/5)、「こども名曲コンサート」(11/7/27.3/20)、「豊田市コンサートホール・シリーズ」(6/20/27.2/6)など多彩な公演が予定されている。
 会見では川瀬の音楽監督の任期が3年間延長され、2029年3月末まで続投することも発表された。創立60周年を迎える名古屋フィルは、“これまで以上に愛されるオーケストラ”を目指し、新たなドラマを奏でていく。

名古屋フィルハーモニー交響楽団
https://www.nagoya-phil.or.jp