山形交響楽団が創立名誉指揮者 村川千秋の追悼コンサートを開催

文:編集部

 山形交響楽団の創立名誉指揮者として半世紀にわたり楽団を導き、今年6月、肺炎のため92歳で亡くなった村川千秋を偲ぶ「山響創立名誉指揮者 村川千秋の軌跡 追悼コンサート」が、11月9日、山形市民会館 大ホールで開催される。チケットはすでに完売。
 村川は、1933年、山形県村山市に生まれる。東京藝術大学を卒業後、アメリカで研鑽を積む。帰国後は、国内の主要なオーケストラを数多く指揮。「ふるさとの山形にオーケストラを」と呼びかけ、1972年、東北初のプロオーケストラとして山形交響楽団を創立。音楽監督兼常任指揮者を務め、2001年には創立名誉指揮者に就任。
「子どもたちに生の演奏を、県民に本物の音楽を!」という強い想いのもと始めたスクールコンサートは、創立以来今日まで続いており、累計5,400回超、延べ300万人以上に生のオーケストラの音を届けている。亡くなるひと月ほど前の5月18日にもタクトを執り、ライフワークとしてきたシベリウスを力強く演奏した。

 追悼コンサートには、村川の長女でヴァイオリン奏者の村川千尋、実弟で映画監督の村川透を迎え、村川の薫陶を受けた教え子たちが弦楽合奏で登場する。プログラムは、シベリウスの「フィンランディア」をはじめ、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」の第1楽章や村川編曲の民謡〈会津磐梯山/庄内おばこ/最上川舟唄〉など村川にちなんだ作品で、映像を交えながら演奏される。またロビーでは、愛用品や写真なども展示される予定。村川が生涯をかけて取り組んだ芸術と、山形に暮らす人々への想いが受け継がれる集いになるだろう。

 指揮を務めるのは、亡くなるひと月ほど前、最後の演奏会となった公演をともにした常任指揮者の阪哲朗。6月の村川の訃報に寄せた阪のメッセージを紹介したい。

「阪さん、山響をよろしくお願いします。くれぐれもよろしくお願いします」
これが先生と最後に交わした会話でしたね。昨日の先生の訃報からもう泣きすぎて、目の血管が切れてしまいました。でも、「泣いていないでやることやれ」と言われそうなのでもう泣きません。

毎年5月の先生のご出身の村山市での演奏会。ここ数年は先生と2人で振り分けるのを、とても楽しみにしてきました。毎回が良い想い出ですが、昨年は先生が編曲された最上川舟唄でピアノを担当させていただき、最初の練習では先生の指揮を見慣れていない僕だけが、オケより先に飛び出てしまい大爆笑になりましたね。
残念なことに先生の最後の演奏会となってしまった、ほんの1か月前の村山公演では、先生は体調のお悪い中、車椅子で指揮台に辿りつかれると、立ったまま指揮をされました。それも1曲のみならず、プログラムの始めと終わり、さらにはアンコールという計3曲も。時間を空けての指揮は健康体でも体が冷えたり、集中力のコントロールなどコンディションを整えるのが難しいはずなのに、先生は見事に指揮されました。そして、その舞台人としての気迫には圧倒されました。こうして先生は、最後まで音楽家としての生き方、人としての生き様を身をもって皆に見せてくださいました。35歳も歳の離れた先生と僕ですが、90歳を超えて生きることさえ普通は難しいのに、その上、指揮をするなど、長い音楽史上でも本当に僅かな選ばれた人しか成し得なかったことです。

引退なさっていた先生を再びお呼びたてして、ここ数年は文字通り、ご自分の命を削りながら再び山響を指揮してくださいました。
先生が50年前にご自分が創られた山響を指揮するという濃い時間、その最後の輝きは、その場に居合わせた全ての人々に忘れられない宝物として残り続けることでしょう。

人の気持ちを動かす事は容易なことではありません。先生は音だけでなく、人を動かし、場の空気を指揮してくださいました。そして、まだまだ僕には先生のシベリウスのような音は出せませんが、これからも精進いたします。
今後は先生を知っている我々が、先生を直接知らない世代に、もっともっと心に音楽を、山響を世界へ、という先生のご遺志を伝えていかなくてはなりません。

そしてきっと、随分先に天国に行かれた先生のご学友であり、我が師である廣瀬量平先生とも久しぶりにお会いになられることでしょう。阪はどうしてる、と聞かれるはずですので、先生が創られ愛された山響を、更に輝きのあるものにするべく、楽員、スタッフと一致団結して頑張っているとお伝えください。2022年に50周年を迎え、今からさらに50年、100年先の山響の明るい未来の夢を見ながら、どうぞ安らかにお休みください。長い間、本当にお疲れ様でした。
                                
山形交響楽団 常任指揮者 阪 哲朗

※山形交響楽団 ホームページより


山響創立名誉指揮者 村川千秋の軌跡 ~追悼コンサート~ 
2025.11/9(日)15:00 山形市民会館【完売】


出演
指揮:阪 哲朗
管弦楽:山形交響楽団
ゲスト:村川 千尋(ヴァイオリン)村川 透(映画監督)
弦楽合奏:村川千秋の薫陶を受けた教え子たち

曲目
シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ JS 64
村川千秋編曲:民謡「会津磐梯山」「庄内おばこ」「最上川舟唄」
〔弦楽合奏〕村川千秋氏の薫陶を受けた教え子たちのステージ
村川千秋:音楽なぞなぞ遊び「動物組曲」より
ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調「運命」作品67より 第1楽章
シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26

問:山響チケットサービス023-616-6607
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