
右:藤倉 大 ©Alf Solbakken
N響の12月定期に登場するのは首席指揮者のファビオ・ルイージ。趣向を凝らしたA、B、Cの3つのプログラムを指揮する。
Aプロはショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番とツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」という興味深い組合せ。ショスタコーヴィチ渾身の大作で現代最高峰のヴァイオリニスト、レオニダス・カヴァコスがソロを担う。名演は必至だろう。ツェムリンスキー作品は後期ロマン派の書法による死と救済の交響詩。濃密で豊麗なオーケストレーションを堪能したい。
BプロではN響委嘱作品である藤倉大の「管弦楽のためのオーシャン・ブレイカー〜ピエール・ブーレーズの思い出に〜」が世界初演される。さらに新鋭トム・ボローのピアノ・ソロによるフランクの交響的変奏曲、 近藤岳のオルガンによるサン=サーンスの交響曲第3番「オルガンつき」が演奏される多彩なプログラム。ルイージとN響ならではの壮麗かつ緻密なサウンドが聴きものとなる。
Cプロには第19回ショパン国際ピアノコンクール優勝者が招かれ、ショパンのピアノ協奏曲のいずれかを演奏する。旬のピアニストをいち早く聴ける好機だ。ニルセンの交響曲第4番「不滅」は、ルイージが近年力を入れるレパートリー。デンマーク国立交響楽団首席指揮者就任を機にニルセンへの造詣を深めたという。フィナーレでの爆発的なエネルギーの開放が楽しみだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年11月号より)
ファビオ・ルイージ(指揮) NHK交響楽団
第2051回 定期公演 Aプログラム
2025.11/29(土)18:00、11/30(日)14:00 NHKホール
第2052回 定期公演 Bプログラム
12/4(木)、12/5(金)各日19:00 サントリーホール
第2053回 定期公演 Cプログラム
12/12(金)19:00、12/13(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp

飯尾洋一 Yoichi Iio
音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 http://www.classicajapan.com/wn/



