【CD】メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲集/トリオ・アコード

 活動歴22年を誇るピアノ三重奏団、トリオ・アコード。ピアノ・トリオには三者の技量を外に向かって発揮してゆく側面と、室内楽としての求心性との両面があるが、トリオ・アコードは後者を軸として曲想に応じ個々の力を開放させるそのバランスが絶妙だ。メンデルスゾーンの2曲でもその美点が生かされており、曲の内実に対し大柄な演奏になりがちな第1番はスリムな疾走感の中に情感が漂う。より入り組んだ内容の第2番は細部が鮮やかに立ち上がり、第1番と異なる魅力を実感させる。アンコール的な姉ファニーの三重奏曲の第3楽章がまた味わい深く、これは全楽章録音してほしい!
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2025年11月号より)

【information】
CD『メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲集/トリオ・アコード』

フェリックス・メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番、同第2番/ファニー・メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲より第3楽章「リート」

トリオ・アコード
【白井圭(ヴァイオリン) 門脇大樹(チェロ) 津田裕也(ピアノ)】

フォンテック
FOCD9926 ¥3300(税込)


矢澤孝樹 Takaki Yazawa

1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。