88鍵の彼方に ——ショパンコンクールをめぐる若き挑戦者たちの肖像

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映画『ピアノフォルテ』が9月26日より全国ロードショー！

　第19回ショパン国際ピアノコンクールの開幕が間近に迫る中、2021年の第18回大会の出場者たちを追ったヤクブ・ピョンテク監督のドキュメンタリー映画『ピアノフォルテ』（2023年/ポーランド/89分 原題：Pianoforte）が、9月26日から全国で順次公開される。ポーランド映画としてはじめて国際エミー賞の芸術番組部門最優秀賞を受賞した作品だ。

　日本勢が稀に見るタレント揃いであったこともあって、日本国内でも社会現象と言ってもよいほど大きな話題を呼んだ前回大会だったが、思えば、パンデミックの影響で異例の1年遅れの開催となるなど、コンテスタントにとっては、ワルシャワにたどり着くまでの歳月が、すでに果てしなく厳しい道のりだった。そうしたなか、世界で最も注目を集めるコンクールの幕が開く。

　連日のライブ配信を通じても、若いピアニストたちの人生を賭けたステージには感動を禁じ得なかったし、それぞれのコンテスタントの人となりも、演奏や舞台袖での何気ない表情などから画面越しに伝わってくるものはあった。しかし、7月に行われたメディア向けの試写会でこの映画を鑑賞したときの感想をひとことで言えば、「こんなドラマがあったのか！」という驚きであった。

　主に描かれるのは、ファイナリストを含む数名のピアニストたち。なかでも印象的なのは、当時17歳でファイナルに進出した二人のエピソード。ピアノ・セレクションの日からめっぽう厳しい（！）師匠、ナターリア・トゥルルの容赦ないコメントにじっと耐えるエヴァ・ゲヴォルギヤン。ヴィヴィアン・リ先生といつも一緒のラオ・ハオ。中国湖南省の出身の彼は、両親の絶大なサポートを受けてピアニストへの道を目指してきた（今大会も出場予定）。国も環境も異なる彼ら一人ひとりのビハインド・ストーリーは魅力的だ。一方、第2位に入賞したアレクサンダー・ガジェヴは「コンクールなど誰も望んでいない。音楽で競うなんて」と疑問を口にする。

　並外れた才能の持ち主ばかりが集まったなかから、一人を選ぼうとすることに意味はあるのか。音楽は自由であるべきものではないのか。その問いに対する答えは、彼らの姿のなかにあるのかもしれない。ピアノという一つの芸術に人生を捧げてきた若者たちが、競争という残酷なシステムの中で緊張やプレッシャーに苛まれながら格闘する姿をカメラは映し出す。そして、その中心には比類なきショパンの音楽が存在している。恐怖・不安・歓喜・栄光・・・観る者を惹きつけてやまない人間ドラマがそこにはある。

文：編集部

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【Information】
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール2025 優勝者リサイタル
2025.12/15（月）19：00 東京オペラシティ コンサートホール
2025.12/16（火）19：00 東京芸術劇場 コンサートホール

第19回ショパン国際ピアノ・コンクール 2025 入賞者ガラ・コンサート
2026.1/27（火）、1/28（水）18：00 東京芸術劇場 コンサートホール
2026.1/31（土）13：30 愛知県芸術劇場 コンサートホール

出演
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール入賞者（複数名）、アンドレイ・ボレイコ（指揮）、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

他公演
2026.1/22（木） 熊本県立劇場 コンサートホール（096-363-2233）
2026.1/23（金） 福岡シンフォニーホール（092-725-9112）
2026.1/24（土）大阪/ザ・シンフォニーホール（ABCチケットインフォメーション06-6453-6000）
2026.1/25（日） 京都コンサートホール（ABCチケットインフォメーション06-6453-6000）
2026.1/29（木） ミューザ川崎シンフォニーホール（神奈川芸術協会045-453-5080）

特集：第19回ショパン国際ピアノコンクール

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