
日本を代表するピアニストの一人である横山幸雄。卓越した技術、スケールの大きい音楽づくりによって感動を、多彩かつ意欲的な企画によって驚きを聴衆に与えてきた。多岐にわたる彼の活動の中でも目を引くのは“全曲演奏”。ショパンの独奏曲全曲演奏がギネス世界記録に認定された後、横山は「ベートーヴェン・プラス」を開始した。ベートーヴェンによって作品番号が与えられた全曲と、他の作曲家の作品を組み合わせるというコンセプトによるコンサートシリーズである。
今回は「悲愴」、「月光」、「テンペスト」、「ワルトシュタイン」、「熱情」という5大ソナタを軸に、生誕150年を迎えたラヴェルのピアノ独奏曲全曲というプログラム。両者は国も時代も大きく違うが、楽曲を緻密に作り上げていく姿勢、溢れるドラマ性など、共通点も見出すことができる。今回のリサイタルによって改めて彼らの相違点と共通点が浮かび上がってくることだろう。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年9月号より)
横山幸雄 ベートーヴェン・プラス Vol.11
2025.9/7(日)10:45 東京オペラシティ コンサートホール(16:15終演予定)
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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