
新日本フィルが8月11日都内で会見を開き、2026/27シーズン(2026年4月~2027年3月)定期演奏会のプログラムを発表した。併せて、音楽監督・佐渡裕の任期を2030年3月まで延長することも明らかにした。

佐渡は、定期演奏会〈トリフォニーホール・シリーズ〉と〈サントリーホール・シリーズ〉で計3演目、〈すみだクラシックの扉〉の2演目に登場する。従来からの「ウィーン・ライン」を継続する形で、独墺系の大規模管弦楽曲を軸にしたプログラムで、指揮者としての統率力と構築美を示す。6月にオール・ブラームス・プロ(26.6/5, 6/6)やマーラーの交響曲第3番(独唱:藤村実穂子)(6/12, 6/13)を、9月にはブルックナーの交響曲第5番(9/25, 9/26)などの大作を自ら指揮するほか、R.シュトラウス「英雄の生涯」(27.1/23, 1/24)などが並ぶ。

4月の〈トリフォニーホール・シリーズ〉〈サントリーホール・シリーズ〉幕開けは、この7月にBBC Promsデビューを飾ったばかりのアイルランドの新鋭指揮者、カレン・ニーブリンのタクトで。バツェヴィチ「オーケストラのための序曲」、クララ・シューマンのピアノ協奏曲(独奏:小林愛実)の女性作曲家による2作に、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」という新鮮な作曲家の組み合わせ。華やかな響きでシーズンが始まる(26.4/11, 4/12)。5月に登場するミシェル・タバシュニクは、ブラームスの交響曲第2番をメインに、ラヴェル「ラ・ヴァルス」、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番(独奏:アンドレイ・イオニーツァ)を。方向性の異なる3つの作品で、80歳を超えたスイスの名匠がオーケストラから巧みなタクトでエネルギーを引き出してくれそう(5/8, 5/9)。10月には、北欧随一のピアニストとしても知られるオリ・ムストネンがベートーヴェン「皇帝」で弾き振りを披露する。作曲家としても才能を発揮する彼の自作曲「トリプティーク」も必聴だ(10/17, 10/18)。このシーズン、一番の驚きは、世界的リコーダー奏者 ドロテー・オーバーリンガーの登場かもしれない。近年、指揮者としての活動も増えてきた彼女による吹き振りでテレマンの協奏曲を。さらにバッハの管弦楽組曲第3番とベートーヴェンの交響曲第2番で、古典の精緻なアンサンブルを聴かせる(27.2/20, 2/21)。

一方の〈すみだクラシックへの扉〉シリーズは、テーマ性のある国別プログラム8演目で構成される。佐渡のほか、藤岡幸夫、沼尻竜典、上岡敏之など国内の経験豊富な指揮者が登場する一方、海外勢では、神童として幼少期から活躍する20代前半のアルマ・ドイチャー、2024年の東京国際指揮者コンクールで優勝したギリシャ出身のコルニリオス・ミハイリディスらフレッシュな顔ぶれが並んだ。

アルマ・ドイチャー ©Ben Ealovega/コルニリオス・ミハイリディス
ソリストでは、角野未来(角野隼斗の妹)、先日のエリザベート王妃国際コンクールで見事第2位入賞を果たした久末航、ウィーン在住でYouTuberとしても人気の石井琢磨ら話題のピアニストたちが登場。ヴァイオリニストも、新日本フィルが若い才能を発掘していく特別演奏会シリーズ「“新しい風”名曲コンサート」で見事な演奏を聴かせた中原梨衣紗のほか、三浦文彰、木嶋真優といったおなじみの奏者もラインナップされ、幅広い聴衆層が楽しめるように工夫が凝らされている。

中原梨衣紗 ©Ayako Yamamoto/三浦文彰 ©Yuji Hori/木嶋真優 ©Kazumi Kurigami
さらに、今回、新たな人材育成の場として「新日本フィルアカデミー」を設立し、次代を担う音楽家の育成にも本格的に乗り出すことが明らかになった。第一期生は、栗原壱成(ヴァイオリン)、多田凌吾(ホルン)、野辺かれん(クラリネット)の3人。技術習得のみならず、公演に参加して実践を積むことによって、舞台で通用する総合力を養うカリキュラムとなっているという。第二期以降は、15歳から29歳までを対象としたオーディション形式で募集を行うなど、一期目の課題をもとに、制度の見直しを行うことも想定している。国内オーケストラ界全体で世代交代が進む中、佐渡体制の継続と相まって、長期的ビジョンを通して楽団の将来像を描く布石ともなりそうだ。
新日本フィルハーモニー交響楽団
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