
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団が来日する。2018年から首席指揮者を務めるセミヨン・ビシュコフとは19年、23年に続いて3度目。まずはショスタコーヴィチの交響曲第8番(10/22サントリーホール)が目をひく。
ソ連の抑圧の記憶が刻まれたチェコのオーケストラと、亡命したロシア人指揮者による演奏。しかし共産党体制が崩壊した1989年以降、逆にチェコ・フィルはより積極的にこの作曲家に取り組んでいるように見える。そもそも彼らのあたたかく優しい触感の弦と輝かしい金管はショスタコーヴィチによく似合うサウンド。ショスタコ・エキスパートでもあるビシュコフの陰影深い表現とともに、政治的な背景を離れて、純粋に音楽作品としてショスタコーヴィチを提示してくれるはずだ。
10月20日のNHKホールでは「わが祖国」全曲も。チェコの魂の音楽。彼らのこの曲の新録音はBBCミュージック誌やグラモフォン誌で表彰されるなど高評価を獲得。恒例のプラハの春音楽祭の開幕「わが祖国」も、今年初めてこのコンビが担当して注目を集めた。さらに、チャイコフスキーの交響曲第5番がメインのプログラムも(10/23)。交響曲全曲を含む「チャイコフスキー・プロジェクト」の録音(2015〜19年)も、彼らの大きな成果のひとつ。2028年での退任を公表しているビシュコフ。快調なコンビの現時点での集大成を堪能できるプログラムを携えての来日公演はうれしい。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2025年8月号より)
セミヨン・ビシュコフ(指揮) チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
2025.10/22(水)、10/23(木)各日19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp
他公演
2025.10/19(日) 大阪/ザ・シンフォニーホール(06-6453-2333)
10/20(月) NHKホール(ハローダイヤル050-5541-8600)
10/21(火) 文京シビックホール(03-5803-1111)
10/25(土) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール(04-2998-7777)
※公演により出演者、プログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


