ウーヴェ・ハイルマンの情熱と師弟の絆で描かれるメンデルスゾーン「エリア」

左より:ウーヴェ・ハイルマン/福井友加里/髙田智宏

 日本在住約30年のドイツ人テノール歌手、ウーヴェ・ハイルマン(1960年ダルムシュタット生まれ)が9月3日、ミューザ川崎シンフォニーホールでメンデルスゾーンの傑作オラトリオ「エリア」を初めて指揮する。

  ハイルマンは20歳からドイツの歌劇場で歌い、28歳で米メトロポリタン歌劇場にデビュー。メジャーレーベルへの録音も盛んに行った。1996年に夫人でソプラノ歌手の中村智子の出身地である鹿児島県に拠点を移し、沖縄県立芸術大学と鹿児島国際大学、さらにエリザベート音楽大学、洗足学園音楽大学などで「400人以上の声楽家を育ててきた」という。

  教職の一線を退く際、「若い時に短期間で世界的キャリアを授けてくれたミューズ(音楽の女神)が再び私にささやいたのです。『あなたの経験と財産を若い日本人音楽家のために捧げなさい』と。最初は鹿児島で合唱団を組織しました」。2022年には第2段階として東京にハイルマン合唱団と「セミプロのオーケストラ」を立ち上げた。オケの中枢は神奈川フィルハーモニー管弦楽団の楽員が担い、「ほぼいつも同じ顔ぶれ」だ。

 「エリア」の独唱にはドイツで活躍する2人の門下生を招いた。ソプラノの福井友加里は24年にカールスルーエ音楽大学オペラ修士課程を修了、同地のバーデン州立歌劇場にモーツァルトやR.シュトラウスのコロラトゥーラとして出演している。バリトンの髙田智宏はキール歌劇場時代に宮廷歌手の称号を得て、20年以降はバーデン州立歌劇場専属。兵庫県立芸術文化センターの佐渡裕プロデュースオペラでも看板歌手の1人だ。

文:池田卓夫

ハイルマン合唱団 & オーケストラ メンデルスゾーン「エリア」全曲
2025.9/3(水)18:30 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:ハイルマン合唱団事務局090-2463-8047 
https://heilmannclassics.com


池田卓夫 Takuo Ikeda(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)

1988年、日本経済新聞社フランクフルト支局長として、ベルリンの壁崩壊からドイツ統一までを現地より報道。1993年以降は文化部にて音楽担当の編集委員を長く務める。2018年に退職後、フリーランスの音楽ジャーナリストとして活動を開始。『音楽の友』『モーストリー・クラシック』等に記事や批評を執筆する他、演奏会プログラムやCD解説も手掛ける。コンサートやCDのプロデュース、司会・通訳、東京音楽コンクール、大阪国際音楽コンクールなどの審査員も務める。著書に『天国からの演奏家たち』(青林堂)がある。
https://www.iketakuhonpo.com