
右:クリスティアン・テツラフ ©Giorgia Bertazzi
新日本フィルがいま勢いに乗っている。佐渡裕・音楽監督とはもとより、海外からの客演指揮者との共演、なかでも昨年のデュトワ、今年のホリガーとの集中度と精度の高い演奏は特筆される。9月定期も名演が期待される指揮者が登場。デンマークの名匠トーマス・ダウスゴーが久しぶりに新日本フィルを振り、ウィーンゆかりのベートーヴェンとブラームス/シェーンベルクの作品を取り上げる。
ダウスゴーが長年首席指揮者を務めたスウェーデン室内管弦楽団と行ったベートーヴェンの管弦楽作品全曲録音は、古楽奏法を採り入れた切れ味の良い演奏で話題を集めた。今回のヴァイオリン協奏曲のソリストは、常にエキサイティングな演奏を繰り広げるクリスティアン・テツラフ。ベートーヴェンを得意とするテツラフは、引き締まったタクトのもと美音を響かせ、雄弁に語り上げるだろう。
後半は、ブラームスのピアノ四重奏曲第1番が新ウィーン楽派のシェーンベルク編曲の管弦楽版で演奏される。シェーンベルクは、「進歩主義者ブラームス」という講演で保守的とされたブラームスの音楽の新しさを説き、新時代の萌芽を見出した。クレンペラーから依頼された編曲版は、渡米後の1937年の作。ブラームスの伝統を引き継ぎ、多彩な管楽器や打楽器に特殊奏法も交え、音の色彩感は豊かに濃厚なサウンドが生み出される。
ダウスゴーなら二人の作曲家の個性をつなぎ、ドライヴの効いた指揮で新たな魅力を引き出してくれるはず。躍動する新日本フィル。ぜひホールで確認していただきたい。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2025年7月号より)
トーマス・ダウスゴー(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団
第665回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
2025.9/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉
9/21(日)14:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp


