未知なる指揮者への期待
多彩な曲が並ぶ定期演奏会と並行し、名曲シリーズでありながらもひと捻りした選曲と注目すべき指揮者のラインナップで行われている、新日本フィルの『新・クラシックへの扉』シリーズ。特に先シーズンおよび今シーズンは、「エル・システマ」(ベネズエラ)出身の若手を起用するなどオリジナリティに富んでおり、未知の指揮者を聴きたいという音楽ファンであれば、ぜひチェックしておきたい逸材も登場する。
6月に指揮台へ上がるナビル・シェハタも、間違いなくそうした一人だろう。ドイツとエジプトの血を受け継いだ彼はドイツでコントラバスを学び、20代前半でベルリン国立歌劇場、さらにはベルリン・フィルの首席奏者に。最高峰のオーケストラにあって充実した音楽生活を送りながら指揮にも意欲を燃やし、バレンボイムやティーレマンら、客演もしているマエストロたちにテクニックを伝授されている。
その彼が新日本フィルと共に演奏するのは、ドヴォルザークの名曲「新世界より」。ドイツ仕込みの正統的な音楽になるか、個性的な表現になるかは聴いてのお楽しみだが、未知の指揮者だからこそ味わえる期待感が湧き上がるだろう。しかしさらに注目すべきは、ソリストとしての顔だ。コンサートの前半にはコントラバスの弾き振り(!)により、セルゲイ・クーセヴィツキーが1902年に作曲した協奏曲を演奏。シェハタだからこそのプログラムであり、注目すべき2日間になるだろう。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)
6/26(金)14:00、6/27(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp