フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2015

首都圏のプロ・オーケストラが集結する“クラシック音楽の夏フェス”

 2005年に産声をあげ、今や春の風物詩として定着した『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン』『東京・春・音楽祭』という2つの音楽祭。その前年である04年にオープンしたミューザ川崎シンフォニーホールを舞台に、夏の祭典としてスタートした『フェスタサマーミューザ KAWASAKI』も、クラシック音楽シーンに新風を巻き起こした“クラシック音楽の夏フェス”だ。約2週間、首都圏のプロ・オーケストラが次々に出演する、まるでオーケストラのカタログを見るかのような前代未聞の音楽祭が、今年で11回目を迎える。
 当初は夏休み時期ということもあってか、クラシック音楽ビギナーも大歓迎の名曲プログラムが多かったものの、定期演奏会でとりあげるような大曲で勝負するオーケストラも徐々に増え、より幅広い音楽ファンが集まるようになった。音楽祭をきっかけに初めてミューザ川崎へ行ったという人や、いつも聴いているオーケストラが違うホールだとどう聞こえるのかに興味があったという方も多く、公開リハーサルや指揮者のプレトークなどで新しいコンサートの楽しさを知ったというファンもいるようだ。さて、今年は…。
 毎年のオープニングとフィナーレに登場するのは、ホールを熟知するフランチャイズ・オーケストラの東響。今年はマーラーの交響曲を2曲演奏し(7/25のオープニングは第1番「巨人」、8/9のフィナーレは第2番「復活」)、まさにオーケストラ・サウンドの愉悦を提供してくれる。オープニングでは横山幸雄のソロによるショパンのピアノ協奏曲第1番も聴けるので、音楽祭の1日目から本格派クラシックの洗礼を受けるというわけだ。
 東京フィルは武満とチャイコフスキーの作品に加え、北ドイツ放送響の首席ホルン奏者であるイェンス・プリュッカーがグリエールの難曲コンチェルトを演奏(7/29)。またプリュッカーは音楽祭スペシャル企画の吹奏楽コンサートにも出演し、ユーフォニウムの外囿祥一郎やサックスの上野耕平らと吹奏楽の名曲などを演奏してくれるのがうれしい(7/26)。読響は、パリ音楽院卒の若手指揮者とドイツ出身のヴァイオリニストを迎えて、爽快なメンデルスゾーンの名曲プログラムを聴かせてくれる(7/30)。
 8月になって最初に登場するのはN響。『スター・ウォーズ』などを中心としたシンフォニックな映画音楽や「フィンランディア」ほかを演奏するが、こちらも夏休み中の映画音楽ファンは要チェックだろう(8/1)。新日本フィルは井上道義の指揮で、ホルストの「惑星」ほか宇宙をテーマにした選曲(8/2)。昨年から仲間に加わった東京ニューシティ管は、25年以上の歴史をもつ世界的なゲーム『ファイナルファンタジー』の音楽などをフル・オーケストラで再現するという興奮プログラムだ(8/3)。
 神奈川フィルはビゼーの「カルメン」組曲やラヴェルの「ボレロ」といったラテン系プログラムに加え、小川典子をゲストに迎えて珍しいルロイ・アンダーソンのピアノ協奏曲を演奏する(8/4)。都響は新音楽監督の大野和士と共に、ショスタコーヴィチの交響曲第5番ほか“じっくりと聴かせる”プログラム(8/5)。日本フィルは気心知れた小林研一郎と共に、得意のシベリウス(交響曲第2番)ほかを(8/7)。そして東京シティ・フィルは錦織健や市原愛ほか人気歌手を揃え、ベートーヴェンの「第九」で勝負をする(8/8)。
 他にもさまざまなコンサートやイベントが用意されている今年の『フェスタサマーミューザKAWASAKI』。約2週間、新しい出会いによって未知の扉を開くような体験ができるに違いない。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

7/25(土)〜8/9(日)
ミューザ川崎シンフォニーホール、昭和音楽大学 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200
※フェスタサマーミューザの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa