第34回青山音楽賞の受賞者が決定!

 1月24日、青山音楽記念館 バロックザール(京都府京都市)を運営する公益財団法人青山音楽財団は、「2024年度第34回青山音楽賞」の受賞者を発表した。

第34回青山音楽賞受賞者
新人賞(2名)
井上玲(いのうえれい/リコーダー)、清水伶(しみずりょう/フルート)
青山賞(2名)
久末航(ひさすえわたる/ピアノ)、中嶋俊晴(なかじまとしはる/カウンターテナー)
バロックザール賞(1組)

Aka Duo【松岡井菜(まつおかせいな/ヴァイオリン)&木口雄人(きぐちゆうと/ピアノ)】

 毎年1月から12月の間にバロックザールで開催された公演を選考の対象とし、演奏技術のみならず演奏会そのものを総合的に評価するユニークな審査方式を採用する本賞。受賞者には賞金や演奏会開催のための助成費用が贈られ、新人賞では留学や国際コンクール参加のための研修費を通した支援も行われる。

 井上玲は1998年、大阪府生まれ。8歳よりリコーダーを、11歳よりフラウト・トラヴェルソを始め、東京大学文学部を経て東京藝術大学大学院修士課程を修了。中学在学中よりコンクールでの受賞を重ね、2021年には第11回テレマン国際古楽コンクール(ドイツ・マクデブルク)で第2位および聴衆賞を獲得した。NHK-FM『リサイタル・パッシオ』出演(23年)、紀尾井ホール主催では初となるリコーダー・リサイタルの開催(24年)など、気鋭の奏者として注目を集めている。

井上玲

 清水伶は第91回日本音楽コンクールをはじめ、国内のコンクールで多数の優勝歴を誇るフルート奏者。15歳で東京交響楽団とイベールの協奏曲を演奏して以来、各地の楽団でソリストを務める一方、クインテット樹(いつき)のメンバーとして昨年、第73回ARDミュンヘン国際音楽コンクール木管五重奏部門で特別賞を獲得するなど、室内楽奏者としても活動。昨年末には新日本フィルハーモニー交響楽団の首席奏者に就任した。

清水伶

 久末航は高校卒業後渡独、フライブルク音楽大学、パリ国立高等音楽院、ベルリン芸術大学にて研鑽を積み、現在もベルリンを拠点とするピアニスト。2017年、第66回ARDミュンヘン国際音楽コンクールで第3位および委嘱作品特別賞を受賞し、一躍注目を集めた。日本にも定期的に帰国、23年のフェスタサマーミューザKAWASAKIで東京都交響楽団と共演した他、今後も金川真弓(ヴァイオリン)、佐藤晴真(チェロ)ら実力派奏者との室内楽公演が予定されている。

久末航 ©Janine Guldener

 中嶋俊晴はウィーン国立音楽大学大学院、アムステルダム音楽院を共に満場一致の栄誉賞付き最優秀にて修了し、ソリストとしてプラハの春音楽祭をはじめとする欧州各地の音楽祭に招聘されるなど国際的に活躍。2020年には五島記念文化賞オペラ新人賞をカウンターテナーとして初めて受賞した。2月には、濱田芳通率いる古楽アンサンブル・アントネッロのオペラ公演《オルフェオ》に出演予定(スペランツァ役)。

中嶋俊晴 ©Martin Chiang

 Aka Duoは2018年、ヴァイオリニスト・松岡井菜とピアニスト・木口雄人がウィーンで結成。以後、ポーランド音楽国際コンクール(23年)など、3つの国際室内楽コンクールで優勝を飾った。ショパン研究所主催「ショパンと彼のヨーロッパ国際音楽祭」2024を皮切りに各国の音楽祭へ出演を重ね、今年3月にはウィーン楽友協会主催「クララの花のアルバム音楽祭」にてリサイタルを開催するなど、活躍の場を広げている。

Aka Duo(左:木口雄人、右:松岡井菜) ©Kazuki Ikegami

[各部門の評価]
新人賞
【演奏会当日26歳未満(声楽部門は29歳未満)の個人の演奏会が対象】
受賞公演:「井上玲 リコーダーリサイタル ~ヴィルトゥオーゾの肖像~」24.1/28(日)
評価:豊かな音楽性と的確なテクニックで自由闊達に奏される調べは、心弾むようなリズムと共に聴衆を心地よいバロックの世界へ誘った。

受賞公演:「清水伶 フルートリサイタル」 24.7/7(日)
評価:明瞭かつ暖かくまろやかな音色と、伸びやかで大らかな音楽性を持ち、終始丁寧で落ち着いた品格ある演奏で会場を大いに魅了した。

青山賞【演奏会当日26歳以上(声楽部門は29歳以上)の個人の演奏会が対象】
受賞公演:「久末航 ピアノリサイタル」24.10/14(月・祝)
評価:どの瞬間においても極めて美しい響きとバランスが保たれ、作品への敬意と愛情が伝わる圧巻の演奏。上質な音楽に心が澄み渡るようであった。

受賞公演:「中嶋俊晴 カウンターテナーリサイタル」24.12/5(木)
評価:カウンターテナーならではの滑らかな歌声と、柔軟で詩情豊かな表現力。会場を包み込むような深く温かみのある響きで、聴衆に感動を与えた。

バロックザール賞【アンサンブルの演奏会が対象】
受賞公演:「Aka Duo Recital 松岡井菜 × 木口雄人 室内楽デュオの熱狂!!」24.11/9(土)
評価:エネルギーがありながらも非常に繊細で緻密な音作り。デュオの醍醐味である対話、融合、掛け合いなどが存分に伝わる充実の演奏会であった。

 授賞式は、3月1日に同ホールで行われ、後日、式典および披露演奏会の様子が特設ページにて配信される。

青山音楽賞
https://aoyama-music-foundation.or.jp/music_awards_winner/