クァルテット・インテグラの第一生命ホール「3大B」シリーズが、全3回の最終回を迎える。“弦楽四重奏界の「3大B」”はベートーヴェン、バルトーク、ブラームス、と掲げることで、圧倒的な存在と認められてきた前2者に劣らぬ価値がブラームスの四重奏曲にもあることを、広く再認識させてくれた好企画である。
なにより強調したいのは、いまクァルテット・インテグラが弾くなら、どんな楽曲でもその魅力を十全に味わえる、充実の体験が約束されていること。近年の彼らの実演は毎回が話題となっていて、例えば秋の王子ホールでのシューベルトは、勢いに頼らず楽曲に秘められたエネルギーと情熱を明らかにする名演で、既に達人のような域に達していた。バルトーク国際とミュンヘン国際コンクールでの活躍から、ロサンゼルスのコルバーン・スクールでのレジデンス・アーティストとしての学びと経験、チェリストの交代など激動の数年を経て、進化のスピードをむしろ上げているかのよう。
この最後の「3大B」は各第3番。優しさと機知にあふれた名品のベートーヴェン、短い時間に無二の個性が凝縮された傑作のバルトーク、不思議な透明感と複雑なテクスチュアを備えたユニークな魅力作のブラームス(ヴィオラの活躍も注目!)。この曲順自体が彼らの意気込みと自信を示すものだし、得意のバルトークはもちろん、構築の難しいブラームスこそ決定的体験ができそうな期待が膨らむ。クァルテット・ファンは聴き逃がせない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年1月号より)
クァルテット・ウィークエンド 2024 – 2025 クァルテット・インテグラ
2025.1/11(土) 14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
https://www.triton-arts.net