メンバーが語る山形交響楽団のいま、そしてこれから
取材・文:長井進之介 写真:編集部
「山響」の愛称で親しまれる山形交響楽団。2019年に阪哲朗が常任指揮者に就任してからはさらに存在感を増しており、今後も意欲的なプログラムの公演が続々と予定されている。今回は、そんな最近の山響について、団員目線でのお話を聞いた。ご協力いただいたのは、中島光之さん(第1ヴァイオリン)、土屋愛菜さん(オーボエ)、松岡恒介さん(トランペット)の3名。阪といえばやはりオペラ。まずは「演奏会形式オペラシリーズ」の第3弾となる《トスカ》についてたずねた。
中島「阪さんが就任されてから《トゥーランドット》や《椿姫》などさまざまなオペラ作品を演奏しており、その魅力をお客様と共有しています。この流れで《トスカ》ができるのはとても楽しみですね。プッチーニ作品はオーケストラも非常に雄弁なのでぜひ注目していただきたいです」
土屋「《トスカ》は大好きなので純粋に楽しみですし、ソリストとして出演される森谷真理さんや宮里直樹さんとは以前も共演し、素晴らしい演技と歌唱を披露されていたので、またご一緒できることが幸せです」
松岡「プッチーニの作品には素晴らしいメロディやハーモニーがたくさん登場しますが、これを阪さんや日本を代表するソリストのみなさんと作り上げていけることは奏者としての喜びです! そして合唱には地元の高校生や小学生も参加するので、山形ならではのサウンドもお楽しみいただけると思います」
さらに3名それぞれが注目している今後の公演についても聞いた。
中島「12月にある名誉指揮者・黒岩英臣さんとの引退前最後の共演です。もっと早くお辞めになる予定だったところを、山響との付き合いがあるからということで引退を延期してくださいました。8月には創立名誉指揮者の村川千秋さん指揮の公演もあり、ここまで導いてくださったみなさんのおかげでいまの山響があるということを実感しています。今後も素晴らしいプログラムが続きますので、充実した山響のサウンドをぜひ聴きにいらしてください」
土屋「阪さんと新年最初にご一緒する『ユアタウンコンサート』の米沢公演ですね。プログラムの1曲がドヴォルザークの『新世界より』で、イングリッシュホルンのソロは私が担当するのですが、阪さんがどのように振られるのか今からとても楽しみです!」
松岡「やはり阪さんが指揮される《トスカ》です。山響の演奏会に足を運んでくださるお客様の中にも、『オペラをとても楽しみにしています』とおっしゃる方が多いです。これまでのオペラ公演でも、阪さんの流れるようなフレーズ感や繊細な表現にふれ、私自身も刺激を受けました」
阪が就任してからの山響の変化をどのように感じているのだろうか?
中島「阪さんはオペラがお得意ということもあり、一つひとつのメロディに動きを持たせるように音楽を作っていきます。そしてそれに対して他のパートでも次の動きを作っていく。どんどん音楽が発展していくんです。こういった音楽作りは編成が小さい山響に合っていると思います。そして阪さんの音楽に敏感に反応できるようになったのは村川さんや黒岩さん、桂冠指揮者の飯森範親さんといった歴代の指揮者によってアンサンブルの力が身に付いてきたからこそでもあります」
土屋「阪さんはまるで踊っているような動きで指揮をされるのですが、それによって音楽に流れや柔軟性が生まれているように思います。手や視線のちょっとした動きから受け取る情報も多く、リハーサルでの言葉のチョイスも絶妙でイメージが深まります。音楽への視野が広がってきたように思います」
松岡「私はちょうど飯森さんから阪さんに変わるころに入団したので、飯森さんの華やかな音楽と、阪さんの軽やかに流れるような音楽の両方を体験することができました。最近の山響はさらに新しいサウンドが引き出されてきているように思います。これからの進化にも注目していただきたいです」
(ぶらあぼ2024年11月号より)
ユアタウンコンサート 米沢公演
2025.1/13(月・祝)15:00 伝国の杜 置賜文化ホール
出演
阪 哲朗(指揮) 他
曲目
佐藤敏直:交響讃歌「やまがた」(抜粋)、ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調「新世界より」 op.95
やまぎん県民ホールシリーズ Vol.4
演奏会形式オペラシリーズⅢ 《トスカ》
2025.2/2(日)15:00 やまぎん県民ホール
出演
阪 哲朗(指揮)、森谷真理(トスカ)、宮里直樹(カヴァラドッシ)、黒田 博(スカルピア) 他
問:山響チケットサービス023-616-6607
https://www.yamakyo.or.jp