オペラとの両輪で活躍広げる松川智哉(指揮) がびわ湖ホール名曲コンサートに登場!

 びわ湖ホール名曲コンサート「華麗なるオーケストラの世界 vol.7」は、新進気鋭の若手指揮者・松川智哉と日本センチュリー交響楽団の演奏で “ドイツ三大B”(J.S.バッハ、ブラームス、ベートーヴェン)をテーマに、魅力いっぱいのプログラムを届けてくれる。クラシック音楽の中でも、とびっきりの名曲を紹介し続けているこのシリーズだが、今回は個人的に「過去イチ!」と称賛したい、捻りの効いたお洒落なプログラムだ。

松川智哉 ©Shigeto IMURA

 松川は、びわ湖ホール第2代芸術監督・沼尻竜典による2015年「オペラ指揮者セミナー」の受講生に選抜された後、同ホールの「プロデュースオペラ」で19年《ジークフリート》から23年《ニュルンベルクのマイスタージンガー》まで副指揮を担当していた。他にも兵庫県立芸術文化センターの「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ」(2017〜19、21〜24)でも副指揮を務め、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 指揮研究員(2019〜21)や、セントラル愛知交響楽団 アソシエイトコンダクター(2022〜24)など、研鑽を積んできた。今回、これまでの実績を評価されて、びわ湖ホールの人気シリーズで、日本センチュリー交響楽団を相手にデビューが決まった。無限の可能性を秘めた若手の勇姿を、しっかり目と耳に焼き付けておきたい。

 プログラムは、指揮者の手腕が問われる3曲。J.S.バッハ「6声のリチェルカーレ」は「音楽の捧げもの」として出版された中の1曲で、本来は鍵盤楽器を想定して書かれた。これをウェーベルンが1935年に管弦楽曲として編曲した。リチェルカーレとはフーガの原型。主題を細かい動機に分割し、声部を様々な楽器に割り当てており、曲の進行に伴い個々の楽器の音色が変化していく。バッハの名旋律をオーケストラサウンドで楽しめるのは、やはり素敵だ。ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」は、楽器の組み合わせや、様々な奏法を駆使し、オーケストラの魅力を最大限に引き出した名曲。作曲当時ハイドン作とされていたディヴェルティメントの第2楽章「聖アントニウスのコラール」による主題が、8つの変奏曲を経て終曲で再び提示され、煌びやかに締め括られる。

日本センチュリー交響楽団 ©井上嘉和

 メインとなるベートーヴェンの交響曲第6番「田園」は、作曲者自ら標題を付けた唯一の交響曲。世の中にはブルーノ・ワルターやカール・ベームなど、往年の名指揮者による名盤から、奇を衒った音源まで数多出回っている。筆者も学生時代、「誰の指揮によるどこの楽団の演奏が好きか?」などと仲間内で熱く語り合ったりしたが、この曲は指揮者によって表情付けが全く変わる難曲なのだ。ベートーヴェンは自然を描写することが目的ではなく、自然が呼び起こす感情を表現したかったようだが、松川は日本センチュリー響とともに、どのような演奏を聴かせてくれるのだろうか。自然といえば、この演奏会とあわせて初冬の琵琶湖越しに比叡や比良の山並みを眺めてみたい! これはびわ湖ホールに足を運ぶしかなさそうだ。
文:磯島浩彰
(ぶらあぼ2024年10月号より)

びわ湖ホール名曲コンサート 華麗なるオーケストラの世界 vol.7
松川智哉 指揮 日本センチュリー交響楽団
2024.12/8(日)15:00 びわ湖ホール 大ホール
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp/