岩田達宗が「水車屋の美しい娘」を“歌劇仕立て”に再構築!

左上より:岩田達宗/小森輝彦/井出德彦/船木こころ/山本 裕

 注目の公演。演出家・岩田達宗とバリトン歌手・小森輝彦がシューベルトの歌曲集「水車屋の美しい娘」を演出付きで上演する。リートによるオペラ、あるいはオペラ仕立てのリートともいうべき試み。両者は2020年にもヴォルフの「イタリア歌曲集」を“上演”しており、その第2弾。

 前回、明確な物語のない「イタリア歌曲集」から、岩田は全46曲の曲順を入れ替えてひとつのラブストーリーを紡ぎ出していた。今度は全曲を通して物語性のある「水車屋」を、どう見せるのか。粉挽き職人(水車屋)の若い徒弟の放浪と恋、そして喪失と死。もちろん詩の表層をなぞるようなものを創るはずはあるまい。劇場の広報誌の記事で岩田は、「前回、歌曲だから音楽だけに集中したいという反応も多く、その反省を踏まえて取り組む」と実直に語っている。とはいえ、その解を見い出すのはそう簡単ではないとも思える。はたしてどんな岩田マジックが飛び出すか。

 美しい声と豊かな音楽性に理知的な解釈を併せ持つ小森とのコンビは、この企画にはこれ以上ないベストなタッグだろう。ピアノは井出德彦。女性コンテンポラリー・ダンサーの船木こころが、主人公を繊細で中性的な少年として演じる(振付:山本裕)。「娘」が舞台には登場しないのはミュラーの詩のとおり。では一方で、より主人公に近い存在として描かれている「小川」をどのように扱うのか。シューベルトの傑作に新しい顔が見えるのか。興味津々。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2024年10月号より)

2024.11/9(土)15:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp