【CD】ピアノ愛奏小品集/深沢亮子

 デビュー70年を超えるレジェンド深沢亮子の、今年5月のリサイタル後のセッション録音。モーツァルトは溌溂として若々しい。若い息吹が感じられる。内面の歌も軽やかなロンドも、とてもきれい。シューベルト「楽興の時」は、不思議な問いかけ、夢想の歌、とり憑かれた楽想、切迫した運動、ためらいがちなしぐさなど、様々な要素が楽しめる。助川敏弥「夜の詩」は深沢が初演した曲で、静かな抑えた情感が、きれいな音色の中で明滅する。バルトークは民謡素材を躍動感たっぷりに堪能させてくれる。ブラームスは豊かに絡み合った声部の交錯から、実に味わい深い音楽が滲み出てくる。心が豊かになるアルバムだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2024年10月号より)

【information】
CD『ピアノ愛奏小品集/深沢亮子』

モーツァルト:ピアノ・ソナタ K.330/シューベルト:楽興の時/助川敏弥:夜の詩、夢逢い、Prelude 春/バルトーク:ルーマニア民俗舞曲/ブラームス:「幻想曲」より第2番、第5番、第6番、第7番

深沢亮子(ピアノ)

ナミ・レコード
WWCC-8015 ¥3300(税込)