情景や心情を繊細に描き出した日本歌曲の世界に、カウンターテナー、リコーダー、そしてピアノによるトリオで新しい光を当てたディスクである。青木洋也の清らかな響きの声と巧みな言葉さばき、高橋明日香の凛とした音色、それらに寄り添う松本望の演奏が圧巻。また、異色の編成を実現した松本の編曲も注目すべきである。編曲者自身は「シンプルなアレンジ」と述べているが、絶妙な音の配置により、各曲の世界観がより鮮やかに聞こえてくる。特に技巧の凝らされたリコーダーのオブリガートが楽しめる「朝だ元気で」は必聴。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2024年8月号より)
【information】
CD『頬につたふ〜日本のうたを歌う〜 /青木洋也&高橋明日香&松本望』
髙田三郎:啄木短歌集/小田進吾(松本望編):山は呼ぶ 野は呼ぶ 海は呼ぶ、朝/飯田信夫(松本編):朝だ元気で/江口夜詩(松本編):心のふるさと/信時潔:沙羅/瀧廉太郎(松本編):荒城の月 他
青木洋也(カウンターテナー)
高橋明日香(リコーダー)
松本望(ピアノ)
録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9061 ¥3080(税込)