ザルツブルク・モーツァルテウム管の首席奏者を務めた後、欧州の主要楽団に客演し、教育面にも力を注いでいるイタリア出身の名手が、20世紀フランスのファゴット作品をまとめて収録したアルバム。鮮やかなテクニックはもとより、豊潤な音色と表情の豊かさに魅了され、同系作品の意外に多彩なテイストも実感させられる。全体が好演だが、ビッチュ「コンチェルティーノ」の妙技とケクラン「3つの小品」の優しさの対照や、ボザ作品の表現などは特に聴き応えあり。ワグナーのニュアンス豊かなピアノの貢献度も高い。ファゴットの魅力を再認識させられる1枚。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年5月号より)
【information】
CD『20世紀パリ/フィリップ・トゥッツァー』
タンスマン:ソナチネ、ファゴット組曲/デュティユー:サラバンドとコルテージュ/ジャンジャン:プレリュードとスケルツォ/ケクラン:ソナタ op.71、3つの小品/ビッチュ:コンチェルティーノ、ロンドレット/フランセ:2つの小品/ボザ:レシ シシリエンヌとロンド
フィリップ・トゥッツァー(ファゴット)
ニコラウス・ワグナー(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-9260 ¥3300(税込)