佐渡裕のマーラーは、師匠のバーンスタイン譲りの表情の濃さと独特のうねりがあり、今作品が生まれたかのような、生き生きとした躍動感がある。トーンキュンストラー管の響きはまろやかでウィーンの香りがあり、マーラーにぴったり。冒頭の2つの主題から弦が優雅で美しい。細かい表情の作り方に自発性があり、実に雄弁。スケルツォの死神のアイロニーとトリオの対比も鮮やかだ。緩徐楽章のチェロとヴァイオリンの対話も極上の美しさ。終楽章はザハリアの透明な声と清潔なイントネーションがとてもきれい。佐渡とトーンキュンストラー管の絶妙なコンビが生んだ極めて美しいマーラーである。
文:横原千史
(ぶらあぼ2024年3月号より)
【information】
CD『マーラー:交響曲第4番 /佐渡裕&トーンキュンストラー管』
マーラー:交響曲第4番
佐渡裕(指揮)
トーンキュンストラー管弦楽団
アデーラ・ザハリア(ソプラノ)
収録:2022年4月、ウィーン(ライブ)
エイベックス・クラシックス
AVCL-84156 ¥2200(税込)