ミモザ弦楽四重奏団 第3回定期演奏会

旧知の4人が織りなす上質なアンサンブル

左より:高橋 渚、前田奈緒、高橋 梓、印田陽介 ©Ayane Shindo

 2021年の結成以来、アウトリーチ活動やコミュニティ施設でのコンサート等、「間近に感じてもらう」活動を柱とするミモザ弦楽四重奏団。活動の集大成的な意味付けで毎年1回開催される定期演奏会が、3月にマリーコンツェルトで行われる。第1ヴァイオリン前田奈緒とチェロ印田陽介が同門、第2ヴァイオリン高橋渚とヴィオラ高橋梓は姉妹という、幼い頃からお互いを知るメンバーが集い、信頼する仲間同士が作り上げる演奏は誠実そのもの。各自が卓越した個人技をもちながら、表面的な刺激にはとらわれない、安心かつ上質な演奏を重ねて評価を上げている。

 演目も魅力的。メンデルスゾーン「4つの小品」op.81は、違う時期に書かれた4つの小曲(変奏曲・スケルツォ・カプリッチョ・フーガ)が、没後に再編されたもの。この作曲家の特長がよく出た4曲で、特に18歳時のフーガは、形式は厳格ながら音楽は柔らかく優しく、心温かくなる名品。モーツァルト第21番「プロシャ王第1番」は、「ハイドン・セット」で緊密な技法を追求した後の作品。チェロが大活躍することで知られるが、実はヴィオラの活躍もなかなかのもので、新たな表現領域に挑む逸品。そして彼らが「必ず取り組む」というベートーヴェンから第9番「ラズモフスキー第3番」。弦楽四重奏のすべてが要求されるような大傑作に挑む。終楽章の熱狂的なフーガは、先述のメンデルスゾーンと好対照も作る。考えられたプログラムで、四重奏の魅力を味わう午後。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年3月号より)

2024.3/10(日)14:00 マリーコンツェルト
問:ミモザ弦楽四重奏団 quartetmimosa@gmail.com 
https://yohsukeinda.com