チャレンジ精神に富み、かつ公演成果の水準の高い優れた企画と公演に贈られる「佐治敬三賞」の第10回(2010年度)の受賞公演として、「井上郷子ピアノリサイタル#19モートン・フェルドマン作品集」と「東京シンフォニエッタ第28回定期演奏会 湯浅譲二特集」が決定した。賞金は各100万円。2人の主な贈賞理由は次のとおり。
【井上郷子】現代音楽の専門家は数多くいるが、井上は徹底して「アメリカ実験音楽」に定点をおいた活動をしていることで、そこから純度の高い演奏スタイルを確立した点。2月の「モートン・フェルドマン作品集」は井上の美点すべてが生かされた演奏会であった。
【東京シンフォニエッタ】同楽団は意欲的な活動を展開してきた室内オーケストラであるが、12月の「湯浅譲二特集」では作曲家自身との緊密な協力のもとに1950年代半ばより、80年代、近年の作品をとりあげ、わが国の音楽界の重鎮の足跡の一面を雄弁に語らしめた点が高く評価された。指揮者で音楽監督の板倉康明以下、メンバーたちの力のこもった演奏も大きく貢献していた。