聴く者の内面を揺さぶる気品あるリリシズム
アレクサンダー・ロマノフスキーの奏でるピアノは、気品あるリリシズムに満ち、そのシリアスな音色は聴く者の内面に揺さぶりを掛ける。30歳にして風格を漂わせる彼の持ち味を、たっぷり堪能できそうなリサイタルが開かれる。ベートーヴェンとショパンという、ピアノ音楽史にとてつもなく大きな功績を残した二人の作曲家のプログラムだ。
前半のベートーヴェンは、「月光」の愛称で親しまれるピアノ・ソナタ第14番、そして晩年のロマン的なソナタ第30番の2曲。深刻な色合いの「月光」と、柔和なホ長調が美しい30番。ロマノフスキーの深みあるタッチが鮮やかなコントラストを聴かせてくれるだろう。30番の終楽章は変奏曲形式である。ロマノフスキーはベートーヴェンの「ディアベッリ変奏曲」の録音をリリースしているだけに、この大作曲家の変奏曲に対する彼なりのアイディアを存分に表現してくれることだろう。
後半のショパンでは、まずバラードの2番と4番を披露する。どちらも美しい光がさすように開始するが、その後激しく展開するドラマをロマノフスキーがどう描き出すのか楽しみだ。そして今回のメイン曲として彼が掲げるピアノ・ソナタ第2番「葬送」。有名な「葬送行進曲」である第3楽章を含め、まったくキャラクターの異なる4つの楽章が展開し、不可解にも取れる形で終曲を迎える作品だ。この曲を通じて彼が今何を感じ、どんな想いを聴衆に届けたいのか、しっかりと受け取りたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)
2015.1/23(金)19:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
他公演
2015.1/17(土) 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
問:0570-064-939