アレクサンダー・ガヴリリュク(ピアノ)

華やかさの奥に秘められた音楽の神髄

©Mika Bovan
©Mika Bovan

 1984年ウクライナ生まれのアレクサンダー・ガヴリリュク。30歳にして、心の奥深くを揺さぶる特別な音を鳴らすことのできるピアニストだ。
 ガヴリリュクは、2000年、わずか16歳で浜松国際ピアノコンクールに優勝したことで、日本では早くから注目を集めていた。有望な才能として期待される中、02年に交通事故に遭い重傷を負う。しかしその後奇跡的な復帰を遂げ、05年ルービンシュタイン国際ピアノコンクールに優勝。さまざまな困難を乗り越えた演奏家の魂は、ますます味わい深い音楽を生むようになった。
 今回の来日リサイタルは4年ぶりということで、待ち望んでいたピアノ好きも多いことだろう。心の底からあふれ出す感情を、ガヴリリュクはさまざまな音を使って表現する。緻密に構成されたブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」、歌い、叫ぶような美しくも生々しいワーグナー=リストの「イゾルデの愛の死」。また同じウクライナ生まれの巨匠ホロヴィッツが編曲した「死の舞踏」や「ラコッツィ行進曲」では、彼が受け継いだロシアン・ピアニズムの精神を聴くことができるだろう。
「演奏に最も刺激を与えるのは聴衆とのつながり。音楽で一つになる瞬間は、人間は個々に異なるものでも、深い所で何かが共通していることを証明してくれる」と語るガヴリリュク。超絶技巧作品が並ぶが、彼が技巧を披露するためにこの曲目を選んだわけではないのは明らかだ。華やかさの奥に秘められた音楽の神髄をしっかりと聴き取りたい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)

2015.1/17(土)13:00 横浜みなとみらいホール
2015.1/20(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp
他公演 
2015.1/14(水)ハーモニーホール福井 問:S・Y・T実行委員会0776-26-0393
1/15(木)守山市民ホール 問:077-583-2532