小林沙羅(ソプラノ)

ウィンナ・オペレッタの名アリアで新年の幕開けを!

©Nippon Columbia
©Nippon Columbia

 ウィーン在住。オペラの舞台からコンサートのソリスト、リサイタルと国内外でめざましい活躍を続ける可憐なソプラノ、小林沙羅。来年1月にはペーター・グート率いるウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラのニューイヤー・コンサート(サントリーホールほか)に出演することが決まり、早くも話題を集めている。

華やかな舞踏会

「J.シュトラウスⅡの作品に代表されるウィーンの音楽には、あの街に住む人々の気質がたっぷり詰まっています。お洒落で(オペレッタ発祥の国でもある)フランス文化贔屓でありながらも自分たちの伝統に強い誇りを持っていて、ダンスをこよなく愛し、とにかく冗談好き。新しい年を踊り出したくなるような音楽と陽気な笑いと共に…それも場末の酒場ではなく、華やかな舞踏会の雰囲気で迎えるコンサートはまさにウィーンっ子の誇りだと思います」
 当日のプログラムはシュトラウスの「美しく青きドナウ」や「皇帝円舞曲」のようなワルツからポルカ、ウィンナ・オペレッタからの名曲たちなどで構成。もちろん喜歌劇《こうもり》からあの有名な歌も登場する。

ウィンナ・ワルツ独特のリズム

「小間使いアデーレの〈侯爵様、あなたのようなお方は〉を歌います。ウィーンで師事している先生のひとりがフォルクスオーパーでこの役を得意とされていた方でいろいろと教わることができました。3拍子ですがリズムの取り方がウィンナ・ワルツ独特のものなので、実際に踊ってみて身体に染みこませたりして。あと、言葉の抑揚の面白さを取り込んでいるのも、この歌の聴き所のひとつなので、そのあたりも意識しつつ、軽やかに声を転がせたいです」
 民族色豊かな旋律でウィンナ・オペレッタの「白銀時代」に華を添えたレハール作品からも。
「喜歌劇《ジュディッタ》は今でもウィーンでは比較的よく上演されるのですが、日本ではこの〈熱き口づけ〉が有名ですね。コンサートで1曲だけ歌う時も物語全体の流れや役柄の心情をのせて、作品の魅力を伝えたいです」
 シュトルツ作曲のウィンナ・リート「プラーター公園は花盛り」もよく知られたこの街の愛唱歌。
「現地では特に年配の方が大好きで、以前ホームで歌った時はみんなで大合唱になりました。オペレッタの名曲もそうですが、クラシックの作品というより小さい頃から自然と耳にしている懐メロのような身近な存在なのですね」

いつの日か元帥夫人を

 今年は、3月にデビュー・アルバム『花のしらべ』の発売と紀尾井ホールでのソロ・リサイタル、7月にギタリスト荘村清志とのデュオ・コンサート、10月に新国立劇場の《パルジファル》出演など、充実の一年だった。
「いろんなことがあり過ぎて、3年分くらいに感じますね。でもまだまだ勉強する時間も確保したいのです。イタリアで良い先生に出会い語学にも少し自信が出てきたので、そちらのレパートリーも更に充実させたいし。とにかく今年、手をかけた扉は私にとってどれも重要なものばかりなので、2015年はそれを大きく開ける年にしたい。将来、自分の声がどう変化していくのか─いつの日か憧れの《ばらの騎士》元帥夫人を歌える日が来るのかも─わかりませんが、今はリリコ・レッジェーロで楽しい役がまだいっぱいあるので、凄く楽しみです!」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)

ウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラ
ニューイヤー・コンサート2015
2015.1/14(水)19:00 サントリーホール
他公演 
2015.1/10(土)豊田市コンサートホール
1/11(日)兵庫県立芸術文化センター
1/13(火)武蔵野市民文化会館
1/18(日)三重県文化会館
共演:小林沙羅  ※1/10のみ 足立さつき
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp