ひとり三役で作曲家の人生を辿る
ピアニスト人生を通してショパンに向き合い続け、もはや自分の作品のような自然さでショパンを弾くようになっているという横山幸雄。超人的な企画であるピアノ作品全曲演奏会をはじめ、さまざまなアプローチでその真髄を探り続けてきた。
そんな彼が今回アフタヌーン・コンサートで行うのは、「横山幸雄の『ショパン物語』」と題し、朗読と演奏でショパンの人生を伝える演奏会。
横山は普段から、曲間のトークで楽曲のエピソードを紹介してくれることが多いが、この公演はまた趣向が異なり、横山が台本を手がけたショパンの物語を自身で朗読しながら演奏をしていくというスタイル。より一層ショパンに感情移入できるよう、偉大なるピアノの詩人の人生のストーリー、作曲の背景を追いながら作品を聴く構成となっている。
途中休憩なしの一連のプログラムは、「革命のエチュード」や「幻想即興曲」といった誰もが知るマスターピースばかりでありつつ、同時にマズルカやバラード、ポロネーズといったショパンの本質を知るための重要なジャンルも欠かさないという、横山ならではのバランス感覚が生かされたもの。普段ピアノリサイタルに行かない人には入りやすく、一方でショパンの音楽を愛好する人には新しい発見がある企画といえるだろう。
横山自身、作曲の背景を語りながら弾くことで「演奏している時の感覚がまるで変わる」こともあるというので、またいつもと違った表現を聴くことになるかもしれない。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2024年1月号より)
2024.1/31(水)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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